過去作品

□天使の居た夜
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────────…


「ん…」


どこだ、ここ

見慣れない天井…
白い、辺り一面白い

あれ、ひょっとしてここ天国?


「おや、目覚めたかい?」
「え?あー、何、天使的な…

ってェェエ!?何が天使!?
化け物じゃねぇか…」
「誰が化け物じゃァァァ!!」
「ごぅぶっ!?」


いってェェエ!!
何これ、天国の癖に全然痛てぇ!!

天国なのに天使じゃねぇ!!
何でババァ!?


「そんだけ悪態吐けるなら大丈夫だね
一応安静にしとくんだよ」
「ちょ、待て、ここ何処!?何!?」
「煩いね
病院何だから静かにしておくれよ」
「へ、病院…?
何で…」
「ったく、土方の頼みじゃなきゃこんなことしないよ」
「土方?
誰、それ…」


ババァと話していると、
ひょっこり黒髪美人が顔を出した


「あ…
目、覚めたんだ、よかった」
「…」
「じゃあ、あたしは他の患者看てるから

アンタ無理すんじゃないよ」


ババァが出ていって、
土方が椅子に座って俺を見る


「……」
「どうした?
意識、覚束ないか?」
「や…あ、えと…」
「ん?」
「あの、え…と」
「あ、ああ
悪ィ、遅れた、土方十四郎だ」
「土方…くん?」
「そうだけど?」
「くん!?」


嘘、こんな可愛くて美人なのに男!?
こいつこそまさに天使…
っていやいやいや、ちょっと待て俺!!

いくら髪が長くて色白で細くて切れ長の目が美人を引き立て…


「大丈夫か…?」
「……」


そんな、
年下の男に上目遣いされたって…


「【自主規制】を前提に結婚して下さい!!」
「なっ…!?///」
「何寝惚けてんだ糞天パ!!」
「ぶっ!!」


土方の手をガシッと握ろうとしたところで
俺の頭にお盆がクリーンヒットした


「いって!!
何すんだババァ俺病人だぞ!?」
「何が病人だい、
ただの栄養失調じゃないか」
「んだと…」
「落ち着けって…」


 *    *    *


「それじゃ土方もここに入院してんの?」
「あー、まあ、そんなとこ」


土方が運んで来てくれた食事を取る

ああ、うめぇ…!


「何で俺のこと助けてくれたの?

つかどうやって見つけたの?」
「この病院、
お前が倒れてた道を少し行って右に曲がって、針葉樹の並木道を歩いていって川の石橋を渡って裏庭を過ぎて一番奥の壊れた門の間を潜って小規模な雑木林を真っ直ぐ進んで林檎の木までいったら左に曲がってトンネルを潜って道に沿って歩いて行って行き止まりに当たったら少し脇にある切り株に鍵があって、その鍵で…」
「あー!
もういい、もういいから!!

えっと何、要するにどういうこと?」
「少し近所を散歩してたらお前が倒れてた」
「近所じゃねェェ!!

どう考えても今の近所じゃねぇだろ!!
ちょっと間違ったら迷宮入りだわ!!」
「んなことねぇよ?

病院の正面玄関を出て500メートルくらい真っ直ぐ歩いたら、
お前がいた所に辿り着く」
「最初からそう言え!!

え、何でさっきの説明あんな長かったの!?」
「や、さっきのはお前を助けた理由で…」


土方のさっきの糞なげぇ説明の続きを聞くと、

どうやらその…鍵を使って門を開けて300メートルくらい歩いたら、

もう使われてない小さな寺があるそうだ


それで、
幼い頃の土方がそこに倒れてたのをさっきのババァが助けてくれたそうで、

俺が昔の自分と重なったんだとか


「でも、無事でよかった」


そう言って笑った土方は、
本当に綺麗で可愛くて


それこそまるで、白い天使の様だった


『──…あれ、今の』


「あ、雪だ」
「え?あ、ああ、そうだな」

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