過去作品

□こころが君を探してる
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「総悟っ!!見廻り行くぞっ!!」
「へい、行ってらっしゃい」
「おめぇも行くんだよ!!」


案の定総悟に逃げられた俺は一人で巡回をする

途中、パン屋の前を通ると
ぴくりと何かに反応する

そちらを見ると、
いつもの笑顔をした女…お妙といったか…が、

あんパンやジャムパン何かを買っているのと目が合った

そしてその傍には気絶している近藤さん


「あら、こんにちは
丁度良かったです、これ、

お店の人に迷惑なので持ち帰ってくれます?」


そう言って女が見たのは近藤さん

仕方がない、
公衆の面前にこれを晒してる訳にもいかねぇし

無意識に取り出していたケータイをポケットにしまい、

近藤さんに声をかける

丁度良い、
総悟を見つけて連れ帰ってもらおう


「近藤さん、起きろ」
「んー?あー……ん、トシ?」
「総悟が巡回中に逃げ出した
見つけたら屯所に連れ帰って溜まった報告書書かせといてくれ」
「おう、
あれ、お妙さんは…」
「とっくに帰ったよ」
「トシはどこ行くんだ?」
「巡回がまだ終わってねぇ」


総悟探しを近藤さんに任せるとして、
俺は巡回を続ける

日も暮れてきた、
さっさと終わらせて帰ろう

暫く歩いたところで、
またぴくりと何かに反応した

すると、
前方に何処かで見た地味顔が歩いていた


「あ、土方さん
こんばんは」
「よお」
「お仕事ですか?」
「ああ
…お前は───…」
「夕飯の買い物です
銀さん達と来たんですけど、

途中で二人とも居なくなっちゃって」
「そうか」


適当に話して別れる

しかし彼奴名前何て言うんだっけ

まぁいいか、眼鏡で


「!」


またまた何かに反応した瞬間───…


「うぉっ!?」
「すいまっせーん!!大丈夫ですかー!?
ってお前か」
「てめっ、万事屋、
危ねぇだろアレ!!

ラケットだよな!?
バドミントンのラケットだよな!?」
「しょうがねぇだろ!!

神楽が川から流れてくるもん引き上げようとして勢い余ってぶん投げちまうんだからよォ!!」


ギャーギャーと言い合ってる内に
さっきの眼鏡を思い出した


「そういやさっきお前んとこの眼鏡が一人で荷物抱えてったぞ」
「あー、そういや買い物の途中だったな
おーい神楽、飯だ、帰るぞ!!」


巡回を終え屯所で飯を食って雑務を片して風呂に入り、

自室で書類整理に取りかかる


「うわっ!?チッ…」


灰皿から煙草の吸殻が落ちてきた

クソッ、普段ならこんなことなんねぇのに、

ついてねぇ


「しかも煙草までなくなりやがった」


本当についてねぇ

座ったまま襖を開く


「───…」


庭に大きな笹が飾られていることに気づく

そういや今日は七夕か…

気紛れで笹に近付く

気になる短冊もあるが、それはあえてそっとしておく(恐らく総悟の仕業だ)

だが、大量の短冊を見て、
何か物足りない気がした


今日はよく晴れていて、
星が綺麗に見える


『……か、ん
「!」


振り返っても誰も居ない

その時、強く風が吹いた

笹が揺れる

足に何かが当たった


「これ…」


トクン、胸が鳴る

ああ、そうか───…


「っそ、情けねぇ…っ」


体が震える
視界がぼやける

無意識に拾い上げたものをきつく握る

何で異常に反応したのか、

何で普段とは違ったのか、

何で無意識の行動を止めたのか


脳ではわかっているつもりだった
いや、実際、わかってるんだ、

ただ、心(こっち)はわかっちゃいねぇ


俺が拾った、
バドミントンの羽が揺れる


「山崎っ…」


お前が居ないと、こうも違う

短冊が物足りなかったのも、その性

彼奴は毎年目立たない所に、
毎年同じ願いの短冊をかけた
(俺以外見つけた奴は居ない)


『土方さん、俺の願いはね』


「クソッ…山崎の癖にっ」


『アンタが幸せで居られることです』


こころが君を探してる
(面影すら何処にもないのに)


俺の願いなんて、叶わねぇ

知ってる、だけど、

俺の願いは───…


「もう一度…っ」


もう一度お前を抱き締め好きと言えたら、

きっと


その時は、お前の願いも叶うよ


.
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