過去作品
□さよなら恋と君
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ついにきた命令
『土方十四郎を殺害すること』
俺はあっさりとその命令を承諾した
否、俺にはそもそも拒否権何てものはないのだ
「副長、山崎です」
「入れ」
夜
誰も居ない、土方が一人の時を選んだ
別に、誰がいても『命令』をこなす分には困らない
その日のうちに真選組を抜ければ良いのだし、
俺の写真や記録は一切残らないはずだ
そのために地味に生きて、
写真を撮られないようにした
問題を起こさないようにした
唯一俺の記録が残る、
土方の資料と、
土方自身は、
俺が始末する
「どうした」
「…」
何も言わずじっとしている俺を怪訝に思い、
土方が俺を見る
「実は、お話がありまして」
出来るだけ自然に、
俺は土方に───…
土方さんに、近付いた
その距離は、0
「んっ…ぁ、ふ…」
長く深く、このまま二人、
溶け合いたかった
「っ…んーっ」
いよいよ本気で苦しくなり、俺の胸を力なく叩く
名残惜しく放せば
飛んでくる拳
それを受け止めて、
すっぽりと抱き締める
「何するっ…」
「副長、」
それは嘘偽りの中に生きる俺の、
唯一の真実だった
「愛してる──…愛してます、土方さん」
「山崎…っ!?」
う、と小さく呻き、
綺麗な紅に染まる
俺の世界で唯一愛しい人
「ど、して…」
俺を見るその瞳に、
俺は微笑み言った
さよなら恋と君
(信じてと言えないのは全てが嘘だったから)
君への最後の嘘を
「愛してましたよ、副長」
君が僕を信じないよう、願っています
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