過去作品

□さよなら恋と君
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真選組副長直属の監察、
山崎退


「山崎ィィィィ!!
てめぇ何堂々とミントンやってんだっ!!」
「ひぃぃぃ!!す、すみません!!」


大のミントン好きで地味で取り柄のない奴


「副長、頼まれていた資料持ってきました」
「入れ」


一方で監察の仕事は完璧で、土方に従順

土方から信頼もされている


「山崎退、只今戻りました」


『表面上は』ね


───────────…


数年前
まだ真選組ができたばかりの頃

俺は面接を受け、余裕で受かった


「ありがとうございます!」


さも嬉しそうに、俺は言ったんだ


「山崎」
「あ、はい!」


最初から直属の監察だった訳じゃない

ただ、土方だけは俺の名前と顔を直ぐ覚えた

俺は驚く程従順に、完璧に仕事をこなした


「お前、俺の部下になれ」


そして信頼を集め、今の立場に至った


「大丈夫か!?」
「は、はい…それより、副長は…?」


それなりにリスクの高い仕事も沢山した

真選組に入った理由?
決まってる


「ああ…トシなら、副長室に…」
「ありがとう、ございます」


スパイとして情報を探る為だ

それ以外に何の目的もないし、良心もちっとも痛まない

否、そもそも俺に心はあるのか?


「ふ、副長、山崎退、です」
「入れ」
「失礼致します」


ただ俺の重要ターゲットが副長の土方十四郎だった

俺の標的
それ以外何でもなかった


「……細けぇとこまで…」
「は、はい
一番、重要そうだった、物を…」


本当に、それだけだったんだ

なのに、

普段からは想像もできないその
蕩けそうな優しい笑顔に


「よくやった、山崎」
「っ…///」


魅せられたんだ


───────────…


気が付けば幾月か幾年かたっていた

特に命令もなかった今までの『日常』

このまま終わってしまえばよかったのに


「あ、いえ、そんな…」
「謙遜すんな
もっと自分に自信を持て」


本当に、そう願わずには居られなかった


「ご苦労だったな、山崎」


心底その人に惚れていたから


そんな日々は、
無情にも直ぐに打ち砕かれた

.
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