過去作品
□例え僕が
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───────────…
「これでよし、と」
それから俺は二人の協力をした
ものこそ触れないし
人と直接関われるわけじゃない
けど、俺ほど長く成仏しないと多少は霊力もつく
乗り移りだって、本当はできる
少しの間だけ、ね
使わないけど
「来た」
俺の努力からか、
二人はたまに一緒に帰るようになった
というのも、二人が話してるときに雨を降らせたり、
銀八の傘を壊したり、
土方さんを少しだけ学校に残すようにしたり
色々やってるんだけどね
「もうすぐ卒業だな、お前」
「…ああ」
「卒業したらさ」
「うん」
「付き合おう、か」
「え…?」
「お前が好きだよ
だから、付き合おう土方」
「っ…ん///」
真っ赤な顔で頷く貴方をみて、
二人がいるのをみて、
その度俺の心がズキリと泣いているのを知っていた
「貴方が好きです、土方さん」
あのときも真っ赤な顔で頷いてた
その相手はもう、俺じゃない
「土方さん、好きです、
愛してます…っ」
俺の役目は、終わりだろ?
はやく、消えなくては
ゆらりと、俺は学校を出た
「?」
「どうした?土方」
「や…今何か、
優しくて、温かくて、
悲しかった…」
───────────…
ある日、その出来事は起きた
案の定、成仏できない俺は土方さんの様子を見に行った
例え傷ついても、
やっぱり会いたかったから
「銀八が…?」
ざわめく教室
何があったんだ…?
「…昨日、バイクで事故にあって、
今病院にいるが、
危ない状態だそうだ」
代理の服部とかいう教師が淡々と告げる
土方さんは──…
「…」
屋上へと向かった貴方の隣につく
「…何やってんだよ、アイツ」
「…土方さん」
触れようそして俺の手は透けて
声をかけても貴方は振り向かなくて
今の俺は、何ができるの?
苦しみ悲しむ貴方に、
俺は勇気づける言葉をかけることも
優しく抱き締めることも
傍にいることさえもできない
「…俺が、必ず──…」
だから今、
素直に泣けない強がりな貴方のために、
「──…雨」
俺が涙を流します
「優しい、雨だな…」
───────────…
銀八の状態は悪かった
生死の境目を行ったりきたり
ただ、俺は誓ったんだ
もうそれは違わない
今の土方さんの幸せに、
俺は“要ら”なくても、
この人は“居る”んだ
「───…」
意識を集中させて、大丈夫、俺の魂が消滅しても
土方さんは幸せにしてみせる
銀八の体がみるみる良くなっていく
俺の魂は重く苦しく、小さくなっていく
もっとだ、
俺に痛みを移して…
そして、土方さんを幸せにしてくれ
「坂田さんの容態は…!!」
見に来た看護婦が驚いて目を見開く
「…先生!!坂田さんの傷が全部なくなってます!!
脈も安定して…」
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