銀×

□鬼灯
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────────────────…


あれから三ヶ月が経つ
土方とばそういう゛関係が続いている


「もう二週間かあ…」


多忙な土方
もちろん会えないことも多い

抱けなくても良いから会いたいが、
何せ彼奴は仕事中だ


「あれ、銀さんこんな時間にどこ行くんですか?」
「飲んでくる」


外に出れば空気は冷たい
もう秋だな、などとどうでもいいことを考えながらふらふらと歩く


「あ、土方──」


呼ぼうとして無意識に声が止まる
建物の中へと土方を招き入れているのは、よく見慣れた顔


「ヅラ…?」


扉は閉ざされ、2人の影も見えなくなる

見間違いか?
確かに、幕吏である土方と浪士であるヅラが一緒に居るわけがない

しかし、見間違えるだろうか?
餓鬼の頃から共に育った戦友と、
何より愛しい己の恋人の顔を

答えが出ないまま、たどり着きそうになった考えを必死に押し潰して、
俺はどうしようもなくただ呆然と立ち尽くしていた


─────────────────…


それから数日が経ち、
俺は釈然としないまま、無理矢理に俺が見た幻覚として片付けていた


「3日前に会ったばっかりなのに…
俺重症だな」


今日は野良猫探しの仕事
路地裏のゴミ箱がガタンと動いた


「そっちか
クロー、居るんなら出てこーい」


路地裏に入っていくと、人の気配を感じる
それも、危険な

本能的に気配を消して近づく
柄に手をかけながら


「っあ…」
「また赤い痕が増えてやがる
今度は何処の野郎だよ?淫乱な真選組副長さんよォ」


目を見張った
土方と、高杉…!?

高杉が服を脱がせながらキスするのを土方は受け止めるばかりで何の抵抗もしない

それどころか慣れたように抱きつく


「や…」
「さっきヤったばっかりなのに、
また随分とご盛んなこって

だが、もう時間だ
あとは銀髪の侍にでも可愛がってもらいな」


呼吸が乱れ、潤んだ瞳の土方と目が合う
堪らなく色っぽい

が、堪えて土方に詰め寄る


「何だよ、さっきの」


はだけて剥き出しになった胸板には無数の痕が目立つ

胸だけじゃない、首筋も鎖骨も腕も
至る所に痕がついている

俺がつけたものから、見覚えのないものまで

土方を見ると、見たことのないくらい妖艶な笑みを浮かべ、
諭すような、煽るような声で俺を真っ直ぐに見据えて言う


「何か問題でも?」
「は?」
「俺、お前だけだとか、付き合ってるとか、言ったことねぇけど?」


クスクスと笑う姿は頭に来るはずなのに、
魅入ってしまって逸らせない


「なあ、俺のこと、嫌いになった?」


顔を覗き込んで上目遣いに見つめてくる
ゆっくりと、言い聞かせるように話し、首を傾げる

嗚呼、脳が、くらくらする


「…他には、誰と寝てんの」


やっと絞り出した声は、情けないほど余裕がない

土方の色気に思考がやられ、体が熱くなり始めてる


「御上と、真選組は総悟に山崎、近藤さん以外は殆ど、
攘夷は桂や高杉、河上──
ああ、春雨の奴等も居たな」


何てことないように言われ、唖然とする  
俺は、沢山居る取り巻きの一人でしかなかったってことか


「やめにするか?俺とのカンケイ」


クスリと楽しそうに笑う土方は何とも艶めかしく美しくて

一度味わってしまえば、
まるで蜘蛛の糸のように絡みついて、逃れることなんてできない

それを知っていて、彼は男達を魅了する
また、男達もそれをわかっていて、彼を愛する

数多の男の中でも自分だけは特別なのだ、と
自分が彼の中でたった一人、本当の恋なのだ、と

虚しい妄想に取り付かれては、その幻想の中に心の平安を求める

不思議な灯りに、魅せられながら


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