山×

□千日紅
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何度生まれ変わっても、あなたと






『生まれ変わり、ね』思いながら、山崎はせんべいをバリバリと噛み砕く

果たして、生まれ変わりなど存在するのだろうか
ドラマなんかでよく耳にするが、現実では、もう一度この人と結婚したいという夫婦は限りなく0に等しい


「おい山崎ィィィ!!」
「は、はいっ!」
「とっくに休憩時間終わってんぞ!」
「す、すみませんっ、今すぐに!!」


慌ててせんべいと湯のみを片づけ、隊服を正す
まだ五分の遅れ、しかし忙しいあの人には惜しい時間
そもそも、俺達の職業で遅刻は命に関わる


「すみません、お待たせしましたっ」


駆け足で門まで行くと煙草を咥えながら副長が振り向く
その様が絵になってしまうからあの人は狡い

「行くぞ」
「はい」


半歩後ろをついて歩きながら、何とはなしに副長に先ほどの疑問を言ってみる

だいたい、反応の予想は付くけど
案の定、はあ?と訝しげな顔をされる


「いえ、何となくですよ」
「くだらねぇな」
「はは、ですよね」


俺の方も別に哲学的な回答を求めていたわけではない
いや、副長が哲学を語るのならそれはそれで面白そうだけど、まあ、ないだろう

俺が軽く笑って、それでこの話題は終了、と思った、が


「あ、でも」
「はい?」
「もし生まれ変わりっつうのがあるなら、

お前は未来も過去も俺の半歩後ろを歩いてるんだろうな」
「え…?」


思いがけない言葉に、立ち止まる
しかし副長はスタスタと何ともなく歩いていく

今のは、どういう意味だ?


「副長、」


何だ、と平然とした顔で振り向かれる

これで赤くなっていれば、
とても貴重な副長のデレになったのだが

そうではないということは、
要するに天然だ


「…そうかもしれないですね」


俺が立ち止まっていたために空いてしまった距離を埋めて、
また半歩後ろを歩きながら言葉を続ける


「俺は過去も未来も今も

何度生まれ変わってもあなたの傍であなたを守りたいです」


そう言うと顔を赤くした副長に怒られる

けど一瞬だけ嬉しそうに笑うから


今あなたの傍にいるだけで幸せだけど、
何度生まれ変わっても、あなたと


そんなもしも話も、たまにはいいかもしれない


-fin-
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