銀×

□狐の剃刀
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叶うなら、君を













思い出したくない過去がある
思い出したい過去がある

けれどその相対する二つは、俺の中では一つの記憶のこと

──何より愛した、彼との思い出


描きたい未来がある
描きたくない未来がある

けれどその二つは、共に俺の元にはやってこないだろう
何故なら描きたい未来には彼が居るし、
描きたくない未来は、既に俺の現実となっているから

暗い、何も見えない、見たくない


彼が居なくなって、どれくらいの月日が流れただろう
何も見えなくなった世界、色のない世界

そんな中で見つけた、妖艶な


「土方──!」


どうして、何故ここに?俺の作った幻覚?幻?夢?
何でもよかった、もう一度会えたのだから
彼は悲しそうな顔をする
俺は触れようと腕を伸ばしたが、土方に触れることはできない


「…銀時」

嗚呼、そんな悲しい顔はしないで、笑ってよ
俺を残していったことに罪悪感を感じてる?でも、いいんだよ
もう一度君と会えたのだから
俺は溢れ出る嬉しさを抑えることができず、口元が緩む

俺を残していったこと、怒ってない、気にしなくていいよ
そう言ってもただ彼は悲しそうな顔をするばかりだ


「あの、な」
「うん?」
「──お前は、」 
「どうした?」


顔を覗き込むと、泣きそうな顔をする

どうしてそんな顔をするの
笑ってよ土方、あの頃みたいに


「土方──」
「銀時、お前は

















二年前、死んだんだよ」


俺が死んだ?違う、何を言っているんだ
死んだのは土方の方だろ?
だって俺は、今──あれ?心臓が、鼓動が、聞こえない
触れれないのは土方が透けているからではなく、俺が透けているから?


「土方…」
「だから銀時、お前はもう俺と生きれないんだ、
成仏してくれ、銀時

もうこれ以上人を傷つけるな、お前らしくないっ…」


成仏?もう土方と生きれない?どうして?
やだ、そんなのやだよ、土方、土方っ

一緒に居ようよ、これからもずっとさ、永遠に
おれはオマエノコトハナサナイヨ──


「ぐ、あっ、銀っ…やめ…カハッ」
「土方、ずっと一緒に生きていこうよ
幸せにするから、ね?」 
「ぎ、ときっ、」
「俺と逝こう?なあ、なあなあ!
来いよ、はやく」


俺の感情が高ぶれば高ぶるほど、
土方はどす黒いものに包まれ首を締めつけられる

もう少し、あと少しだ
こっちにおいで?一生愛するよ、土方


「お前はっ、が、っ、2、ね前の、あの日っ!
あっ、ぐ…戦争を、とめ、よ、してっ

高杉っ、たお、す時、ゲホッカッ、あっ犠牲に、なって…」


脳に燃え盛る炎が鮮明に映し出される
皆の叫び声の中、自分の息遣いと物が燃えていく音が煩い

土方、土方はどこに──


「そ、れで、ぎん、死んだ…っ

俺をのこしてっ、お前は死んだんだ、銀時っ!」


何かが俺の腕にポタポタと落ちる
雨?…なみだ?

その両方に俺の体は濡らされる


「銀時、もういいから」
「土方…?」
「そのうち俺もいくから、待ってて」
「やだ、やだはなれたくない!」
「銀時」


ふわりと笑う土方の頬を伝う涙が俺に落ちる

あ…、温かい
土方の心の声が聞こえるよう


「大丈夫だから、銀時
もうゆっくり休んで」
「土方…」


堪らなく眠い
俺はいつの間にか、すごく疲れていたようだ

土方の顔をまだ見ていたいけど、瞼が落ちてくる


「なあ、銀時」


土方──





「愛してるよ」




















叶うなら、君をまだ──




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