銀×

□蜘蛛の糸
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「はぁ、はぁ、はっ…あ」


呼吸が乱れる

上手く息ができない
視界は霞んで、足元も覚束ない

もうだいぶ浸食されてるみてぇだな…


「っあ、ゲホッゲホッ」


咽せて、口からは血が出る

その勢いのまま、ドサリと木の根に体を預け、崩れるように座り込む

嗚呼、情けねぇ

瞼が重たい、勝手に下りてきやがる

必死に抵抗してみるが、他人の体みてぇにてんで言うことを聞かない

…もう俺の体じゃねぇのかもな

それでも頭に過ぎるのは、彼奴等のことばかり

毎日馬鹿やって、無茶して、笑って…
え、何この走馬灯
俺いつから子持ちのお父さんになったっけ?

それなら奥さんは…


「…た、」


呼びたい、のにもうまともに声が出ない

ああ、会いてぇな
俺が居なくなったらさ、お前は泣いてくれるかな…?

まさかな
きっとお前のことだから、何でもない風に生きていくんだろう

煙草、吸い過ぎるなよ
マヨネーズも控え目にな
あんま無理すんなよ、一人で抱え込むな
自分を大事にしろよ、
仕事ばっかりしないでたまには休め
それから、悪い男に引っかかるなよ
あと、幸せになれよ、俺のことなんか忘れて…

忘れて…?
俺は、お前の中からもいつか消えるんだろうか

ほんの少しだけでもいいから、
お前の中に残っていたい、なんて

それは我が儘だろうか?


「…ひ、じか、たっ」


土方、会いたい…っ


過去の俺が俺を殺して、
そしたら未来は変わって

俺は、生きていないかも知れない


だから、お前の世界だけは守から、どうか幸せになって














お前のためなら、俺は地獄に居ても構わない


.

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