銀×

□アンスリウム
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夏休み、

部活で学校を訪れる者は多く、
もちろん、職員も基本的には居る

夏休み終盤なら新学期の準備もある


そして俺の心の中の恋人も、
部活のためほぼ毎日学校へ来ていた

もちろん、今日も


「ひーじかくん」 
「なんスか」
「うわっ、何その嫌そうな顔!」
「気持ちを素直に表現しました」
「泣いていいですか」


土方のことを考えていたらちょうど1人で歩いていたから迷わず声をかける

こんなやりとりももうお決まりだ


「部活抜けて、どこ行くの?」
「飲み物買いに」


総悟のやつ、自分で行けばいいのに

そんなことを悪態吐きながらも、
土方は結局幼なじみである沖田に甘い


「偶然だね、俺も」
「そうですか
それじゃ」


言って、早足に歩き出した土方の肩を掴む


「ちょっ、酷くない!?
今の普通に一緒に行く流れじゃん!!」
「先生と一緒に行く必要性がありません」
「先生と話したい、みたいな可愛い気持ちはないわけ?」
「アンタみたいな駄目教師と話したい物好きなんて猿飛くらいだろ」


何やかんやで一緒に歩き出す
授業中以外はめったに話せないんだ、このチャンスみすみす逃すか!

(授業以外は沖田に邪魔される)


「毎日毎日、大変だねー」
「別に、大会前なんで」
「俺だったらサボるな」
「アンタ本当駄目教師だな」
「真面目だねえ、土方くんは」


煙草をくゆらしながら冗談っぽく茶化す
土方が眉をピクリと少しだけ歪ませる


「総悟でさえ毎日来てますよ」
「そりゃ、そうだろうな」
「は?何で」 
「お前が来てるから」


意味がわからない、と首を傾げ見つめられる
やべ、可愛いんですけど


「えっとイチゴ牛乳は…
お、あった」
「俺アイスコーヒー」
「はいはいって何奢ってもらおうとしてんの!?」
「普通頑張ってる生徒にジュースくらい奢ってくれるだろ」
「いや、俺万年金欠だから!」
「だせぇな」
「おまっ、毎日頑張って生きてる先生にそれは酷いと思います」
「お前は頑張ってねぇだろ
ってことでアイスコーヒー」
「どういうことで!?
つうかお前何コーヒーなんて大人なもん、飲んでんの」
「アンタが子どもっぽすぎるだけだろ」


ガコン、と音を立ててイチゴ牛乳とアイスコーヒーが出てくる

やっぱりさ、男としては好きな子に奢りたいじゃん!


「あと、総悟がオレンジジュース、近藤さんが緑茶」
「え、ちょ、俺本当にお金ないよ!?」


結局財布の中身を空にされ、土方はサンキュー、と一言で行ってしまおうとするからそれはもう必死で止めた


「なんですか」
「いや、その、もうちょっと土方くんとお話ししたいなあ、と思って」


はは、と笑う
あー、きっと怒られるだろうな

そう思ったが何の反応もない

見ると、土方は真っ赤な顔で俺から目をそらす


「…何言ってんだよ」


え、ちょ、かわいい!何これかわいい!!

もう襲ってもいい!?
俺教師だけどもう生徒襲っちゃっていい!?


「だぅて、俺土方が」
「土方さん何してたんでィ、遅いでさァ」
「総悟!」
「あれ、銀八先生
偶然ですねィ」
「総悟こそ、何しに来たんだ?」
「アンタがあんまりにもおせぇから、迎えに来てやったんでさァ
どっかの変態に襲われてねぇかと思って」


ギクッと体が反応する
沖田の視線が痛い


「早くしねぇとぬるくなるでしょ」
「ん、オレンジジュース」
「先生もここにいるってことは、当然奢ってくれたんで?」
「おう」
「先生ゴチになりやーす
土方さん、行きやしょ、近藤さんが待ってまさァ」


遠ざかっていく背中を見つめていると、
途中で振り返った沖田と目が合う

にやり、とその顔は笑った


あーくそっ、
教師辞めてぇー!!


END
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