短編

□耳かき
1ページ/1ページ

唯一、私が彼に喜んで頼んでいることがある。
耳掃除だ。
私が耳を綿棒で掃除していると、ボクがしてあげると言って、無理やり私を横に寝かせたのが始まりだ。
最初は気が気でなかったが、慣れてしまった。
それ以来、お願いしている。
自分で掃除してしまうのもいいが、やっぱり人にしてもらった方が綺麗になった気がする。
彼は嬉々として丁寧に丹念に優しく耳穴を掃除してくれる。
「耳だけじゃなくて、全部してあげるのにね」
これは彼の口癖だ。しょっちゅう言っている。

彼に掃除をしてもらっていると気持ちがぼんやりしてはっきりしない。
まどろみと戯れている。

「はい、終わったよ」
彼に頭を軽くぽんぽんと叩かれ、起こされる。

こうやって少しずつ少しずつ毒されて中毒になって抜け出せなくなってしますのかな。
分かっているのに、私はまた頼む。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ