短編
□シャンプー
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食事の時、入浴の時、トイレの時、手錠が外される機会が増えた。
私の、この空間での唯一の自由時間ができた。
「あー幸せ」
彼は今、私の髪の毛に顔を埋めてうっとりとしている。
「キミの匂いがする」
お風呂場には、なぜか私が使っていた製品のシャンプー&リンスが完備されている。
あとボディソープも洗顔も。
そういえば洗面台の歯磨き粉まで同じ製品。
今のご時世、同じ内容で違う名前の商品なんて沢山ありふれている筈だ。
なのに。
「ボクもキミと同じ匂いがする」
自分の髪に手をやって匂いを嗅ぎ比べる。
私は自分と彼の頭から、身体から、口から、毒々しいくらい甘い甘い臭いがして堪らない。
中毒死してしまいそうだ。