小説

□某クエストのファンタジー
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部屋でテレビゲームの某クエストをしていると、突然雷鳴が響き、一瞬で画面が闇と化した。
周りを見渡すと部屋全体、町全体が暗くざわついていた。
なんだ、停電か。暫くしたらまた電気が戻るだろう。あーくそ。折角ボス戦前まで行ったのに。
…。あれ?…。おかしいな。ざわつきが大きくなった。
原因を確かめる為に窓を開けて様子を探る。
「くそっ、あいつらめ……。日の光を奪うに飽き足らず、ついに電気供給を止めやがった…」
「この世の終わりだわ…」「魔王め!!」「なぜこんな目に合わなければならないの…」
つまり、この停電は魔王のせいで、電気供給が止められて……。は?意味分からん。は?私ボス戦手前だったんですけど?
魔王何してくれてんの?ねぇ?おいコラ。こんなことしといて無事でいられると思うなよ?
…そういえば納屋に剣とか鎧とかあったな。まだ錆びてないし使えた筈だ。
私のお父さんは道場の経営で忙しいだろうし。
私のお母さんは病院勤めで疲れているだろうし。
お祖母ちゃんは占いで忙しいし、そもそも歳だし。
隣の幼馴染は海賊だから普段家にいないから頼りにならないし。
従兄はこのご時世だ。山賊家業が思うようにいかなくて大変だろうし。
別の従妹はダンサーや歌手、芸人を経て、今やスーパースターだから忙しいだろうし。
私が行くしかないんだろうな…。
面倒くさいなー。一週間くらいで討伐できるかな。
あ…その間、誰が村を守るんだろ。やばいな…。全然考えてなかった。

なんて考えていると、村人に呼ばれた。
「ちょっとお姉さん、外にモンスターいるんだけどさ、ちょっと退治してくんない?」
「はーい。今行きまーす」ちょっとひと仕事してきますか。
呪文ひとつで事足りるので無装備で家を出る。

村の外には二本足で直立しローブを纏う、太った猫が杖を振り回していた。
「お前がここの領主かにゃ!勝負するにゃ!!」
「メラゾーマ」
「あちっ!あちちち!!あっついのにゃ!!止めるのにゃ止めてくれにゃ降参だなにゃ!降参するのにゃ!!!」
尻尾に火が点いたらしく、消そうとあちこち走り回っている。
「ベホイミ」
「はぁはぁ…助かったにゃ…。それにしても強すぎるのにゃ…」
憎めない顔の猫を見て、いいことを思い付いた。
「ねぇ猫。名前は?」
「にゃ?ミケというにゃ」
「そう。じゃあミケ、これからあなたは私の仲間ね」
「…にゃ?」首を傾げている。
「そうと決まれば取り合えずこの村の安全でも守って貰おうかしら」
「にゃ?なんでそうなるのにゃ?おかしいにゃ」
「ミケ。あなた、私に負けておいて何を言っているのかしら?」
「うぅ…にゃあ」
「それじゃ、宜しく」
「…にゃい……」
ミケが職務から逃げないよう、魚で釣っておくことにした。
目を輝かせて、喜んで働くと言っていたから大丈夫だろう。
もしなんかあったら、私を呼び出せるよう魔法の水晶を渡しておいた。
丸い形だと目をらんらんとさせて話をろくに聞かないものだから、四角く切ってしまった。

それにしても強すぎる?笑っちゃうね。
生まれながらの勇者に何言ってんだか。
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