今日も明日も明後日も

□女中のお手伝い
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「……で、連れてこられた。と?」

『…ええ、その通りです。』

「ったく、近藤さんは…」

『十四郎さん…あの、迷惑なら帰るけど…』

「あ?けど頼まれたんだろ?」

どうしてこうなったのか…。

いつも通りに仕事に出かけた銀時達を見送った後、買い物に街へと出てみれば、十四郎さんとお見合いをしたあの日に会って以来の近藤さんとばったり遭遇した。

少しだけ世間話に花を咲かせていれば、話題は真選組の屯所の話へ。

なんでも先日、あまりにも隊士がトイレを綺麗に使わないから隊内で厠改革を行ったのだとか…。
けれど結局うまくはいかなかったとのこと。

そこでなぜか。
「ちょうどいい!伊織ちゃん、良ければ屯所で一日女中をやらないか!?」

『女中?』

「今、ちょうど女中さんが少なくてね…困ってたところなんだ。どうだ、トシとも会えるし一石二鳥じゃないか!」

『え!?あの、ちょっ、私あの、十四郎さんとは…!』

「まあまあ、そんな照れずに!」

 あ…、という間もなく連れてこられたのが真選組屯所という看板がよく目立つ大きなお屋敷。の、なぜか土方の部屋だった。

事の成り行きを彼に話せば、返って来たのは大きなため息。

「すまねえな。あの人の代わりに俺から謝っとく。」

『ううん、大丈夫。あの…、』

「あ?」

『もしかして、私とのことまだ近藤さんには…』

「ああ、なんか言うタイミング逃しちまってな…まだ言ってねェんだ。
悪い。それのせいだな。」

『そうだったんだ。こっちこそ、なんかごめん…』

「いや、気にすんなって言っただろ。
良けりゃ万事屋への依頼って形で依頼料も払うけど、やってくれんのか?」

『いいの?それは凄く助かるけど。』

「ああ、じゃあよろしく頼む。」

 という事で、真選組の屯所で急遽一日だけ女中をすることになった。

銀時達の依頼は確か今日は少し時間がかかりそうだったし、彼は携帯も持っていないから後で連絡しようと結論づけた。



「伊織ちゃん、洗濯頼めるかい?」

『あ、はい。わかりました!
…わ、すごいなこの量…』

「いっぱい汚れてるからね。頼むよ。」

 さっそく先輩女中から仕事を任され、洗濯を開始した。

すでに一度目の洗濯を回していたようで、先に終了していた洗濯物をカゴに入れる。
五つもある洗濯機からすべて洗濯物を出し終わると、今度は汚れ物を順に洗濯機に入れてスイッチを入れていく。

『血…』

三つ目の洗濯機に取り掛かったところで、汚れ物の中に血で汚れている物を発見した。
パリパリに乾いてしまっていてこのまま入れても落ちないだろう。

近くにあった桶に湯をはり、ごしごしと手でこすっていくとしばらくして粗方落ちた。
これであとは洗濯機に任せればいい。

そうしてすべての洗濯機のスタートボタンを押した後、洗濯機五つ分のカゴをすぐ近くの物干し場へと運んだ。

良い天気に気持ちの良い風が吹いて、洗濯日和だろう。
万事屋に干してきた洗濯物も今頃気持ちよく風に揺れていることと思う。

すべて干し終わると、タイミングよくやって来た年配女中に今度は昼食づくりに駆り出される。

『料理は任せてください。』

「じゃあ、伊織ちゃんには味噌汁とあと一品なんでもいいから頼むよ。よろしくね。」

『はい。』

 ある材料なら何でも使っていいから。と言われ、早速大きな鍋と向き合うと材料を物色。

十分すぎるほどの材料を見て、さすが幕府機関の真選組だな…と少し関心。
万事屋と違い、お金には困ることはなさそうだ。

「あと、三十分もすれば隊士が群れをなしてやってくるからね。」

 そう言われれば思考を中断して作業に集中せざるを得なかった。

そして三十分後、時計が十二時を指すと共に食堂へやってくる隊士たち。

一緒に台所にいた女中さんいわく、「若い子が配膳したほうが隊士も喜ぶからね。」という事で無理やり昼食の渡し口へ立たされてしまえば、次々と並んでやってくる男、男、男。

そんなに言うほど若くはないのだけど…と思いながら次々にやってくる隊士に昼食の乗ったトレーを渡していれば、かけられる声。

当たり前に、見慣れない女なわけだから気になるのだろうけど…

「君、新しく入ったコ?」

「うおおおお!若い女の子だァァ!」

「可愛い!」

 ――局長グッジョブ!――最高ォ!と、今まで体験したこともないぐらい怒涛のように男から迫られる…。

あ、これ、銀さんにばれたらマズくね?なんて考えながら一つ一つの声掛けに返事を返していくのは自分の性格だ。




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