今日も明日も明後日も
□万事屋という職業に就く彼のそばにいる覚悟をしよう
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『おはよう、銀さん』
「…おう、」
目が覚めれば目の前に伊織の顔。
それはここの所、毎朝のように目覚めて一番に見る景色だった。
朝目が覚めれば伊織の顔を一番に見て、伊織の作った朝食を神楽と取り合いながら食べては「大人げない。」と伊織に笑われながら過ぎていく朝の光景。
仕事があれば相変わらず伊織は留守番だし、銀時も無理に連れて行こうとは思わなかった。
家に帰れば笑顔で伊織が出迎えてくれるということが、銀時には特別だった。
そんな毎日を送るうちに日に日に少し痩せていた伊織も元の体型に戻ってきたという事にも安心していた銀時。
そんなある日、
『…帰って…来ない…』
「伊織は家で待ってるアル!」
「僕たちが銀さんを探してきますから!」
夕飯の時間になっても仕事に行った銀時が帰宅しない。
今日は神楽と新八も一緒に依頼主の元へと行ったはずだったのだが、その二人は夕方に先に帰ってきた。
銀時は、あとで帰る。と別行動をとったらしい。
よくある事だと二人は言うが、あまりにも不安がる伊織を留守番にして銀時を探しに出ていった。
伊織が戻ってきて一週間、こんなことは一度もなかったのに‥‥
それも酷い不安を感じる原因になっている。
『銀さん…』
もし、銀さんがこのまま帰って来なかったら…
そんな思いばかりが頭の中を占めた。
『銀さんが…』
いなく、なったら…――
頭の先からつま先までの血液がすべて抜け落ちてしまったかのような感覚が襲う。
いなくなったら…そんな、私、銀さんが、存在が、すべて、消える……消えて、しまう…。
意味をなさない言葉の単語ばかりが浮かんでは消える。
事務所のソファーに座りながら、どんどん悪い方向へと向かっていく思考はとまってくれない。
…―ガタッ
突然の物音に照明も点けず急いで玄関へ向かえば、予想通りに銀時が玄関入口で立っていた。
『っぎんさん!』
「…おう、たでーま」
『神楽ちゃんたちに会わなかった?』
「あ?いや、会わなかったけど…なんで?」
ブーツを脱ぐ仕草が妙にゆっくりなのに気づいて、玄関の照明のスイッチをいれれば目に飛び込んできたのは大きく切られた着物の肩と、腕と脇腹から流れる血…
『――ッ!?』
「伊織、ごめん…手当、してくんねぇ?」
『‥はやく上がって』
ソファーに座らせ服を脱がしてみれば、左肩から背中は大きく斬られて腕と脇腹は銃で撃たれていた。
傷を見ても眉一つ動かすことなく、伊織はてきぱきと手当をしていく。
『銀さん、傷だけじゃないでしょ』
「あー…まあ、ちょっとだけ毒もられた…」
『毒…』
視線を包帯を巻き終えた傷から銀時の顔へと移せば、なるほど…良いとは言えない顔色だった。
一度、大きく深呼吸した伊織に銀時は首を傾げながら見つめる。
「伊織…―、」
「銀さん帰ったん…で、すか…」
「銀ちゃんいるアルか!」
視界いっぱいには、伊織の意外に長い睫。
視界の端に外から帰って来たらしい新八と神楽が見ていてわかるほど硬直していた。
それは銀時にも言えたことだけれど。