今日も明日も明後日も
□無邪気な子ほど可愛いと感じるのはやっぱり実際可愛いから
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「じゃあ、万事屋に戻りましょうか。」
新八の一言で、お登勢から解放された銀時と伊織は立ち上がり出口へと向かった。
当分来るんじゃないよ。というお登勢の言葉が背後から掛けられ、伊織は深く一礼し、銀時は後ろ手に手を振るとそのまま外へと出て行く。
新八と神楽もそのあとを追う。
「伊織、伊織も今日から万事屋に住むアルか?」
『そう、なるね。…“も”って神楽ちゃん、もしかして万事屋に住んでる?』
「そうヨ」
二階の万事屋への移動中、隣から可愛らしい顔をのぞかせたのは紫の番傘が妙に似合う神楽だ。
しかし伊織が気になったのはそんな少女の質問ではなく、まるで神楽が万事屋に住んでいるかのような言葉だった。
さっ、と後ろから新八と歩いてくる彼を振り合えればばっちりと視線が合う。
「なんだ?」
『なんでもない』
彼の事だからいろいろと事情があるのだろう。深く考えるのはやめた。
この歳で嫉妬なんてみっともない。しかも十代の女の子相手に…。
「伊織!今日は一緒にお風呂に入ろうヨ!」
『え…、』
「誰かとお風呂に入るなんて久しぶりネ!」
『…う、うん』
少しためらいながらも神楽に返事をし、伊織は無意識に自分の肩へそっと触れる。
嬉しそうに階段を上る神楽を見れば何も言えなかった。
そのまま同じように階段を上って行くと相変わらずの玄関。
空いた扉の先をじっと見つめていれば銀時と新八が横を通り過ぎていく。
「おかえり…伊織」
「伊織さん、おかえりなさい」
「伊織おかえりヨ!」
玄関を上がった先で銀時、新八、神楽の三人が並び、伊織を迎え入れた。
じわじわと目の奥が熱くなって次第に視界が滲んでくる。
『た…、ただいま!』
「何回泣くんだよ」
なんて言いながらも中々足を動かさない伊織の背を優しく押す銀時。
正面からは神楽がティッシュの箱を持って走ってきた。
また、今日からあの日の生活の続きが始まる。
あの時よりも少し騒がしくなったけれど、また銀時の傍で彼と同じ時間を過ごすことができるのだ。