今日も明日も明後日も

□心構えが肝心
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 季節は初夏。
肌にささる日差しも木の陰を歩けば涼しい。


けれど、今はそんな木陰もない街中を歩いていた。
ああ…あの通りは大江戸すーぱーに続いてるし、あそこの路地裏に前は野良猫が子猫を産んでたな。
銀さんに内緒でいちご牛乳あげてたっけ。――あれ?猫にいちご牛乳ってダメだっけ。牛乳自体ダメなんだっけ。…なんで今になって思い出すかな。変な罪悪感が…。


『・・・あ。』

 そうこうしていると視界の横には見慣れたスナックと看板。

“万事屋銀ちゃん”・・・約2年半振りだ。

変わらない汚れた看板、万事屋に続く階段、玄関、インターホン・・・

すべてがずっと懐かしかった。ずっと忘れられないものだった。


 ――ピンポーン

そんなインターホンの音すら少し懐かしく感じる。

『…あれ?いない?』

 しばらく待っても誰も出てくる気配はない。仕事だろうか…

試しに玄関に手をかけてみれば簡単に横へスライドする扉。
ちょっと、不用心すぎるよ銀さん。空き巣でも入ったらどうすんの…ああ、空き巣に盗られるほどの物はないか。
すぐに結論付けて、さてどうしよう。と考える。

さすがに中で待ってるのも・・・気が引けるし、あ。そうだ、お登勢さんのところで待たせてもらえばいいのか。

そうと決まればすぐに階段を下りて向かうのは“スナックお登勢”。
まだ少し早い時間だし看板も出ていないけれど、今の時間なら準備中だろう。

――ガラガラ‥

「誰だい?まだ今は準備中‥‥――あんた‥」

『お久しぶりです、お登勢さん』

「ああ。そこにお座り」

『‥はい』

 お登勢さんが顎で指したカウンターの席に大人しく席に着けば、何も言わずにコップ一杯のお酒を出してくれた。

「ウチは酒しか置いてないからね。
――それで、もう大丈夫なのかい?」

『はい。お陰様で。もうこの通りです』

「その割には少し痩せたね」

『ちゃんと食べてますよ。痩せたのはただのダイエット効果です』

「そうかい。あたしゃ、また銀時がそばにいないから食事ものどを通らないのかと思ったけどねェ。ばーさんの思い違いかね」

 ふぅ、と煙草の煙を吐きだすお登勢さんの表情は何もかもすべてを見透かしているようだ。

『はは、ごまかせないですねぇ』

「誰が一番近くであんたらを見てたと思ってんだ。ほんと、あんたら2人は素直じゃないんだよ。もう一杯飲むかい?」

『いただきます』




 
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