今日も明日も明後日も

□2年の月日は短いようで長い
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 ――春。庭の桜も満開に咲いた。


「伊織ちゃーん、支度はできたかしらー?」

『はーい。今行くよ母さん。』

 あの万事屋からここへ帰ってきてもう、二度目の春。

江戸から離れて徐々に悪夢を見る事もなくなった。
悲鳴を上げて飛び起きることもあまりない。






けれど、今度は別の夢を見るようになった。



変に静かな万事屋の玄関…空虚な眼をした彼が私に言うのだ、「いらない」と。

そうして私は足元に突然現れる崖に落ちていく…。


そこまで考えて、忘れようと首を振った。
今日は大事な日、なのだから。

「じゃあ、行きましょう。先方さんはもう待っておられるはずよ。」

『…うん。』

「今回はもう、本当に頼むわよ伊織。」

『わかってる…』

 大事な日…

「これであなたのお見合いは何度目かしら。」

 そう…、お見合いの日。


あの日、帰ってきて1年ほど悪夢を見続けて見た目もボロボロだった私をそっとしておいてくれた両親は、徐々に回復していく私を見るとある日「お見合いをしないか?」と切り出してきた。
それもなかなかにいい家の人ばかりを選んで。

母さんがそう皮肉っぽく言うのも、これが本当に何度目になるかわからないお見合いだからなのだけれど…毎回、決まってあと一歩のところまでくるにもかかわらず、必ず破談になるのだ。
私がそうなるように仕向けている為なのだろうけれど…

「次は決まるといいわね。」

 そうニッコリと笑う母さんに曖昧に笑って返すことしかできなかった。




やって来たのは二年ぶりの江戸。

かぶき町ではないから彼に会う確率は低いだろうけれど、車を降りて無意識に周囲を見渡してしまった。

「行くわよ。」

 その母さんの声で我に返り、目の前の高級料理屋へと入る。




 
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