今日も明日も明後日も

□万事屋眼鏡の観察
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僕は常々思うことがある。

ここ、万事屋で働き始めて随分と経つけれどその間にたくさんの事があった。
つい先日、竜宮城の内乱に巻き込まれて無事に帰ってこれたのは記憶に新しい。

僕、志村新八はそんな万事屋でオーナーの銀さんと神楽ちゃんと3人で馬鹿みたいににぎやかな毎日を送っている。

そんな中、観察しているとふとした瞬間に銀さんがどこか遠くを見ているような気がするんだ。
普段はいつものマダオだけれど、先日僕は偶然見てしまった。

あの日は、買い物から帰ると神楽ちゃんは出かけてて…銀さんが一人で万事屋に留守番してた。
偶然事務所につながる扉が少しだけ開いているのに気付いて、何気なくこっそりとそこから中の様子をうかがったんだ。

今考えればどうしてそんなことしたのかと聞かれても、銀さんの秘密みたいなものが見れるかな…という軽い気持ちだった。
何事もなければそのまま扉をガラッと開けて中に入ればいいや。なんていう。
だから、

「………。」

 仕事用の机の椅子に腰かけて、そこでなにかを眺める銀さんの表情が何となく見てはいけないモノだったような気がした僕はもう一度静かに玄関の外に出て大きな音で玄関を開けた。
大きな声で声をかけるのも忘れず…。


一体、あの時銀さんが何を見ていたのかなんて僕には到底わからないことだけれど…





「神楽…オラ、これ使え。」

「え?いいアルか!?」

「ああ、もう、置いといても勿体ねーしな。」

 数日前、ボロボロになっても銀さんからもらった傘を自分で直して使っていた神楽ちゃんが、修繕不可能なボロボロの傘にして帰って来た時。

銀さんは万事屋の玄関の傘立にずっとさしてあった日傘を神楽ちゃんに差し出した。

赤地で白色の桜模様がついたソレは、この万事屋には似合わない物だと思ってずっと気になってたけど、神楽ちゃんも何かを察したのかそれについて銀さんに聞くことはしなかったみたいだし。



それが、案外意外なところから話を聞かされたのは数日後の事。

「――なんだぃ、神楽。
その日傘…伊織のじゃないか?」

「誰ヨそれ。」

「お登勢さん、この日傘の持ち主知ってるんですか?」

 その日は大した依頼じゃないからと銀さんが一人で仕事に出かけたため、神楽ちゃんと僕で定春の散歩に出かようと通りへ出た。

ちょうどスナックから出てきたお登勢さんが神楽ちゃんが差している傘を見て驚いたようにそう言ったのを、僕たちも驚いて聞き返した。
お登勢さんは難しい顔をしながら一度、大きくため息を吐く。

「あの男(アイツ)はあんたらに何も話さないんだろ?」

「そう、なんですけど。きっとあの人、聞いても話してくれないと思います…。」

 あの人はいつもそうだ。肝心なことは何も僕らに言ってはくれない。

「この傘私にくれる時、銀ちゃん見たことない顔してたネ。」

そんな僕らの様子に、お登勢さんは心折れたのか店の中へと入れてくれた。




 
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