今日も明日も明後日も
□暑さも2人で分け合えばにぶんのいち
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暑い。―――暑い。
まるで灼熱の劫火のように天上から降り注ぐ日光が、私の肌をじりじりと焼きにかかってくる。
ああ、このままなら明日には顔は真っ赤に日焼けしていることだろう。
『暑いー…』
「伊織ー、言うんじゃねェよ。声に出したらもっと暑くなんだろーが。ほら言ってみ?寒いって。」
『さついー。』
「何それ寒いの?暑いの?」
梅雨も終わりを告げ、真夏へと季節は移り替わった。
道行く人々は皆、今日も元気な太陽の暑さに汗を流しながら行きかっている。そして、その中には私と銀さんもいるわけで…。
先日、でーとしようという約束をしたあと眠りについてしまった私が目を覚ました頃には外は真っ暗で。
慌てて飛び起きた私に銀さんがブフッと笑いだすものだからケツキックをお見舞いしたのは記憶に今もなお残っている。
しかし、あの時の銀さんの夕食は美味しかった。
つまり、何の話かというと今日はそのでーとの約束をやっと果たそうというわけである。
なにも暑い中で外出しなくても…と言う私に銀さんが江戸の案内もついでだと言うものだから何も言えなくなりこうして今外を二人で歩いている。
隣の銀さんは暑いと言いながらもそれほど汗をかいているようには見えない。
それに比べて私の背中はすでに取り返しのつかないことになっているだろう。
『あー、いいなー銀さん。』
「あ?なにが。」
『銀髪って涼しそうだもんなー。…あ、でも天パだからもさもさしててプラスマイナスゼロか。』
「喧嘩売ってる?」
額に青筋を浮かべる銀さんだけれどそれを気にするほど今の私の精神状態に余裕はない。
『だって見てよ。私なんて黒髪だから太陽の熱を吸収しまくりだよ?』
「まー、確かにな。つーか、髪上げれば?ちょっとでも涼しくなんじゃね?」
『そーなんだけど。面倒というか…そんなに長い髪なわけでもないから櫛もかんざしも持ってないしさー。』
それこそ面倒くさそうに鼻をほじりだした銀さんは「女捨ててるなソレ。」と鼻から小指を取りだした。
あんたこそ道の真ん中で鼻クソほじるとか人間捨ててるんじゃね。と思った。