*SS置き場*
□乙女ゲー?
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「なにやってんだ?」
土方さんは私の手元を覗き込む。
「乙女ゲーです。」
「なんだ?ソレ?」
眉を寄せてハテナマークの土方さん。
あのですね、
恋愛ゲームなんです。ただストーリーを進めて行くだけなんですけど、要所要所で会話とかの選択肢があってそれによりエンドが違うんです。
王子と宇陽極説の末、晴れて彼女になり、そして婚約者になり、結婚してプリンセスになるんです。
叔父の友人に頼まれて偽装結婚をするハメになるんです。偽装婚約者を演じているうちにその人の本質に触れて徐々に恋に落ちるっていう…
「攻略キャラは、最初はロベルトだったんですけど、執事のゼンさんにしました。偽装結婚相手は崇生さんです。」
やっぱり結婚するなら崇生さんだよね〜。
弁護士で背が高くて家事も完璧で優しい。申し分なさすぎる。
今ね、崇生さん攻略中なの。
「……みか、お前は俺を差し置いてその崇生って奴となら結婚したいというのか?」
今まで黙って聞いていた土方さんが口を開いた。
「…俺だって、真選組副長で背もそこそこ高い。整理整頓はちゃんと出来てる方だと思う。」
「キレやすく、
マヨラーで、ヘビースモーカーで、妖刀にとりつかれヘタレキャラになる。フォローが上手く、ツッコミキャラかと思いきや、時々天然。ああ、まだあるけど書ききれない!」
「更に詳しく言ってんじゃねーよ!」
いいえ、公式です。
「てか、なに対抗意識出してんですか?」
「お前が崇生って奴と結婚したいと言うからじゃねェか!!!」
「だって王子は結婚してくれたけど、崇生さんったら式は挙げたのにまだ結婚してくれないんだもん!!入籍してないんだよ?まだ。」
「なにィ!?お前崇生って奴と結婚式まで挙げてたんかよ?!」
「誓いのキスまでしました。
温泉宿に泊まって露天風呂入りました。てか一緒に住んでます。」
「…………。」
土方さんは若干涙目だ。
あの、
「あのぅ……土方さん?」
「……俺は騙されていたのか。」←体育座り
「だから!ゲームです!!ゲームの中の話です!!!」
私は携帯の画面を見せて説明する。
「…………////」
ようやく理解した様子の土方さん。
「わかっていただけましたか?」
「……ああ。」
すると、一人の男の人が私に声をかけてきた。
「みかちゃん。」
「え?え?えええーー?崇生さん??」
見ると崇生さんが立っている。
「あんまり遅いから、心配になって探しにきたんだよ?」
崇生さんは首を傾げてにっこりと微笑む。そして、表情をキリリとさせると土方さんに向かって名刺を差し出す。
「わたくし弁護士の丸山と申します。妻のみかがご迷惑をおかけ致しました。」
土方さんに深々と頭を下げる崇生さんの、凛とした表情と仕草に私は思わず見惚れてしまう。
「崇生さん…」
「みかちゃん、探したんだよ?LIにも居ないし、くにさんに聞いたら仕事終わったらすぐに家に帰ったっていうし。だめじゃないか、警察のお世話になっちゃあ…」
崇生さんは私の手を引く。
「さぁ、おいで。俺たちの家に帰ろう。」
「うん。」
私は崇生さんの腕にしがみついた。
***
ビクッ
「って、なんだよコレェェ!!!最終的には俺はただの警察の人って、どういう事だァァァ!!!」
「なに寝ぼけているんですか土方さん!!私が乙女ゲーについて話している最中に、眠ってしまってたじゃあないですか!!!」
「え?ん?ああ、夢えええ???」
「何の夢見てたんですか?」
「みかが崇生って奴のとこに…(ゴニョゴニョ)」
「だから、崇生さんはゲームの中の人ですからね?」
「でも、結婚するなら崇生さんだって言ってたじゃねーか…」
「何言ってるんですか。私は土方さんがいちばん…」
私は耳元に唇を寄せて囁く。「好きですよ」
「ゲームにヤキモチ妬いてくれたんですか?」
土方さんは恥ずかしそうに顔を赤らめそっぽを向く。
私は土方さんの頬にチュっとキスをする。
「妬いてねェよ……」
それでも目を合わせない土方さんなのだった。
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