マヨネーズ王国の入り口
□袖触れ合うも多生の縁んんん?
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ホワイトデーネタでーす。
まずは地味な序盤から(笑)
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なんだか忙しい。
忙しい、という言葉を使いたくないくらいに様々な業務に追われる日々を送っていて、ここの所の私は家と職場の往復、というなんとも無機質な毎日を送っていた。
疲れたな…
予報通りに、帰る頃には雨が降っていて、私はマフラーに顔をうずめて傘をさすと自宅へと急いだ。
途中、コンビニに立ち寄り、昨夜に切れてしまった蛍光灯とプリンを持ってレジに向かう。
「買うのはいいけど、どうしようかな…」
会計を済ませ、店の外に出ようとすると、誰かに声をかけられる。
「みかさんじゃないですか。こんばんは。」
声がした方向に視線を向けると、山崎さんがジャンプを立ち読みしていた。
「あ、山崎さん。こんばんは。」
「今、帰りなんですか?」
「うん、最近ちょっと忙しくてね。」
山崎さんと並ぶと、意外に思っていたよりも背丈があることに気がつく。
あ……そうだ!
「山崎さん、今日は暇ですか?」
「え、ええ。ジャンプ買って屯所で読もうと思ってたくらいなんで、暇っていえば暇ですけど…。
あっ!!俺がジャンプ読んでること、副長には内緒でお願いしますよ!?」
「ああ、ハイハイ。じゃあ、内緒にするってことにしますから、ひとつ頼み事を聞いて貰ってもいいですか?」
「はい、構いませんよ?」
事情を話して、山崎さんと一緒にコンビニを出る。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
お互いコンビニの袋を持っているので、ガサガサいわせながら他愛ない話をしながら傘をさして並んで歩き、家に向かう。
「ありがとうございます、助かります。椅子でも微妙に届かなくて…引っ越しした時に踏み台を買っておくべきでした。」
山崎さんに切れてしまった部屋の蛍光灯を替えてもらう。
「いえいえ。でも、なんで俺なんです?万事屋の旦那にでも頼めばいいじゃないですか〜」
「ちょっと色々あって、銀さんには頼めなくて。ちょうど山崎さんに会ったから…」
銀さんに頼むとトシが怒るから。
「ちょうどって…。あ、そうですか。」
「あはは、すみません。でもたぶん、他の人なら頼めなかったと思うので…」
「たまたま会ったのが、沖田さんでもですか?」
「頼めますね……アラ」
「局長は?」
「頼めますね……アララ」
「てか、副長に頼んだらいいじゃないですか!もう替えちゃいましたけど!!」
それはそうだけど…
「山崎さんなら波風たたないから、適任だったんですよ。それに、忙しい人を捕まえてまで、こんなつまらない事を頼むのはどうかと思って…」
「でも、たまたま誰にも会わなかったらどーするつもりだったんですか?」
どうするって…
「最終手段として、テーブルの上に椅子を…」
「って、違うだろォォォォ!!そこは副長呼べよォォォォ!!!それに危ないですよ!!!」
おお、流石ツッコミ担当。
「あのねぇ、みかさんは遠慮しすぎなんですよ。アンタはつまらない事って言うけれど、自分では出来なくて困ってたんでしょ?」
「ま、まぁ…そうです。」
「そんな、つまらない事でも、副長はみかさんに頼って欲しいんですよ。俺なんかに頼んだらダメなんですよ。」
「うーん、土方さんには面倒かけたくないし…」
「その、面倒をかけて欲しいんですよ。…副長はそういう人です。」
山崎さんって、土方さんのことちゃんとよく見てるんだな…
「迷惑じゃあないかな?」
「だから!その迷惑をかけて欲しいんですよ!!」
そうか…
「次は副長に頼んでみて下さいね。たぶん、文句言いつつ、喜んでやってくれますから。」
「わかりました。蛍光灯替えてもらったお礼に、夕飯食べいってくださいね?」
「オイィィィ!!!俺の話、ちゃんと聞いてましたァァァ!?」
わかっている。
山崎さんの言ってることは、私もわかっているんだけれど…
やっぱり忙しい人の手を煩わせるのは、どうも気が引けるのだ。
今度、踏み台買いに行こう…
「まったく、アンタという人は…そんなんだから、副長も心配で仕方ないんだ。」
ぶつくさ言う山崎さん。
「夕飯まだでしょ?ささっと作りますから、食べていって下さいよ。」
「い、いえ、屯所に戻って食べるのでお構いなく…」
ぐるーきゅるるー
タイミングよく山崎さんのお腹がなる。
「で、では…お言葉に甘えて。」
山崎さんはほんのり頬を染めて恥ずかしそうに言った。
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