夢小説2

□季節の変わりめには風邪をひく
1ページ/2ページ

拍手夢5

『季節の変わりめには風邪をひく』


【一角 編】

冬の寒さも少し和らぎ、まだ風は冷たいけれど、よく晴れた日は暖かさを感じる。

「とりあえず、午前の仕事はこれで終わりっ。」

大きく伸びをして横の席を見れば、乱雑に置かれている書類が目に入る。

その席の主は今日はまだここへ顔をだしていない。

「私も体を動かすかな。」

執務室を去り、道場へと向かえばいつも聞こえてくる大きな声が聞こえない。

道場を見渡してみるが、居るはずの姿がそこにはない。

「あれ?一角どこかに行っちゃったの?」

稽古中の隊士に声をかければ

「斑目三席はまだお見えになっていませんが。」

そんな言葉が返ってくる。

遅れて来るなんてことはよくあるけれど、それにしては少し遅すぎる。

気になるので部屋へと向かい、扉の前で声をかけてみるが返事はない。

霊圧は感じるので扉を開ければ、静かに眠っていた。

「一角?」

部屋へと入り、よく見れば顔色がよくない。

そっとおでこに手を当てればかなりの熱を感じる。

冷やさなければとおでこから手を離すと、その手を掴まれた。

「・・どう・・した?」

「どうしたじゃないよ。一角大丈夫?」

「・・何が?」

「何がって、熱あるみたいだよ。」

一角は入りこむ日射しに眩しそうにしている。

「今何時だ?」

「もうすぐ昼だけど。」

「もうそんなかよ。今起きる。」

体を起こそうとする一角。

「だから熱があるんだって。」

「そんなの、体動かしゃあ治る。」

起き上がろうとする一角の肩を布団へと押しやれば、ボスっという音と共に一角の頭が再び枕に埋まる。

「ほら、私の力に勝てないほど弱ってるじゃない。今日は寝てなよ。」

まだ起きようとする一角だが私に肩を押さえられ置き上がることが出来ないでいる。

普段なら絶対にこんなことはあり得ない。

「・・おまえがバカ力なだけだ。」

「そういうことにしておいてあげる。」

抵抗が弱まると一角の肩から手を外し、代わりに布団を掛けてやる。

氷水や薬を用意し、一通りの世話を終え横に座っていれば

「なんか、嬉しそうだな。」

私の顔を見る一角

「たまにはこういうのもいいかな、なんて。」

「何が?」

「私より弱い一角。」

「俺は弱くねぇ。」

眉間にしわを寄せているが、いつもの勢いはない。

「おい、いつまでもここにいるとうつるぞ。」

「いいよ、一角の風邪ならうつっても。」

私はそう言って一角に唇を重ねた。

唇をそっと離せば

「たまにはこういうのも悪くねぇかもな。」

そう言って薄く笑った一角は目を閉じそのまま眠りについた。

私はそんな一角にもう一度唇を重ね、暫く一角の端正な顔を見つめていた。


END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ