ふみ
□生誕
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――――――
軽く触れる口付けを何度かした後、親指で僕の唇をなぞる。
もう気持ち良くて仕方がなくて…
半開きの口から息は漏れちゃうし…‥恥ずかしくって、頬から耳へと熱が帯びたのを感じていた。
「き、喜矢武さ…ん?‥外だと、僕…恥ずかし‥っ…」
『‥はーい、わかりましたよ。じゃ、早く案内して?…鬼龍院さんの家‥』
小首を傾げ笑顔で僕を見つめてくる喜矢武さん…反則だから。その表情。
―――――――
「着いたよ〜。」
下を向いて歩く彼に一声掛けると脚がピタリと止まった。
『‥んぁ。此処?…入って良いの?‥』
「いいよ、そこに座って待ってて‥飲み物くらいは出すよ。」
コくんと頷いて、胡座をかく彼。
――――――
『…鬼龍院さん遅くない?‥飲み物持ってくるついでにトイレ行ったの?…10分以上は経ってるよなぁ…』
「喜矢武さーん!‥28回目の誕生日おめでとう。」
そこに居たのは素足にひざ丈ワンピを着た俺等のバンドのボーカルだった。丁寧にセミロングのウィッグまで装着してよ…‥。
『何、してるの……‥』
「喜矢武さんが喜んでくれそうなプレゼントを選び抜けなくて‥…。僕の女装は奥の手なんだよ!…時間掛かって、ごめんね?」
そう言いながら鬼龍院さんは俺の横にぴったりと座り此方を笑顔で見ている。
‥腕まで組んできちゃって‥…‥可愛いヤツだな。
『これが奥の手、なの?…』
「…‥‥うん。失敗したかな‥」
セミなゆるふわの髪に指先を通しながら上目遣いで伺ってくる。
『うんとね‥……‥』
俺はゆっくりと彼を床に押し付けると、首筋に1つだけ痕を残し耳許で囁く…
『‥鬼龍院さん、女装するといつにも増して綺麗なんだなって…。
…‥俺、ガマンできなくなるでしょ。‥準備は良いんだよね……?』
「うん。…‥今日は喜矢武さんの好きにして、いいよ…‥。僕が嫌だ‥って言おうが拒否、しようが‥。今日だけは僕…‥喜矢武さんのモノ、なんだから…ね?…」
目を逸らしながらも恥ずかしそうに言葉を振り絞ってる鬼龍院さんの頬が、一瞬にして熱くなったのを触れていた俺の指が感じ取る…
誕生日、幸せ過ぎるわ…俺。
『おぅ…。鬼龍院さんは今日だけ、俺のモノな‥』
鬼龍院さんは毎日のように俺のモノだけれどね…。こんなに可愛いのは今日だけかも!
おわり。