ふみ

□瞳
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数分後、ドアがゆっくりと開く。彼の身体が覗いた…


『…‥!ぃッ‥た…っ‥』


僕はすぐさま彼の肩を掴み、ドアに身体を押し付けた。

「おかーえり。」

『痛ぇな…。いきなり何すんだ…放せ、すきっぱ』


彼は背中の痛みを我慢して僕の表情を窺い、腕を振り解こうと肩を動かすけど…

意外と強い力出してるんだよね。僕。


「放さない。…喜矢武さんだって‥少しは期待してるんじゃなーい?」

『‥は、何言ってんの?…』


強がる彼の瞳を見つめて身体を押さえたまま空いた手で脇腹を擦る。


『…っん‥…』

「ほらー。身体は期待してる…」

『るせぇ。‥こっち見んな』


目を逸らして脱力した喜矢武さんはその場に座り込んだ。


「…大丈夫?」

僕はしゃがみ込んで四つん這いになり、彼の首筋に唇を落とす…。

‥案外敏感らしくて、肩を竦めて固まる喜矢武さんは子犬のようで可愛い。

「怖くないよね?」

許可も取らず彼の唇を奪う僕。
小鳥が啄むような軽い口付けを何度かしてやると喜矢武さんが背中に腕を廻してきた。
僕は四つん這いのまま再び唇を重ね、口付けを深めた…

『ん……ぁ‥ッ……‥』

苦しさで息を漏らす喜矢武さんも好きなんだよね…

『…ん‥…‥もぃ…ゃ‥』

背中の手に一段と力が加わったのを合図に、僕はゆっくりと絡めていた舌を抜き去る。

「…‥ふぅ。‥喜矢武さんはAV撮らせたらNO.1!だよ。」


『‥…この変態…‥‥』


唇を唾液で濡らし頬を朱に染め、肩で息つく喜矢武さん…

アナタには秘密兵器並の破壊力があるよ。



『責任取れよ。』


「はぃ?」


『‥我慢できねぇの…‥。これ、鬼龍院のせいだから』


両手で僕の頬を押さえ、瞳の奥を穴が開くくらいに見つめてきながら、照れくさそうにそう言ってきた彼。


‥喜矢武さんからのお願いなんて滅多にない…


今日はとことん可愛がってあげましょう。



『マネ、今日は来ないんでしょ‥』

「!ぇ、あ‥うん。」


喜矢武さんが図星なこと言うから声も裏返る。



『…丁度いいや、続きは鬼龍院の家だな…』


「‥ぇ」

『ほら、行こ!』



僕は喜矢武さんに手を引かれて事務所を出ていた…。




おわり。
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