ふみ
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―喜矢武さんから、こんなメールが届いてた…
《次の演劇、俺はキスシーンしたくない。
淳クンか研二とやってくれよ…キスシーン。》
…台本見せたときはキスシーン喜んでたのに…
どしたの。喜矢武さん。
僕は気になって喜矢武さんに連絡を入れてみる。
《台本、気に入らなかった?…手直しするよ。
だから、嫌なところを教えてほしい。》
数分経たないうちに返信メール。
《全部気に入らねぇ。》
僕は画面を見ながら固まってしまった。
あの喜矢武さんが、僕の台本内容を否定した…。
今までそんなことなかったのに…。
やっぱ、俳優やると変わってしまうのかな、台本に対する考えとか…さ。
「‥喜矢武さ…ん‥‥」
気づけば目の前が霞んでて、携帯の画面もぼやけている。
―ピーンポーン―
インターホンに気づくまで少し時間が掛かった。
「こんな時間に…」
玄関へ向かいながら、目に浮かぶ涙を軽く振り払う。
―――――カチャリ