ふみ

□生誕
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「喜矢武さん、あのさ。」

『んー…?』



楽屋の隅で壁に凭れて眠りこけそうな彼の肩を軽く叩く。


「今日、収録終わったら…家に来ない?」

『ん。…!‥はぃ??…』

頭を上げ目をぱちくりさせる彼の耳許へ僕は囁く。

「‥だから、今日…家に来て?ね、喜矢武さん。‥‥」

『どしたの、いきなり…』

「別になんでもないよ」

ふぅーん、と頷いて再び壁に凭れた彼。

――――――――


仕事が終わり、僕も喜矢武さんも楽屋へ戻る。

「早く着替えてー。」

『…指図すんな。すきっぱが‥』

ジーンズを穿き替え此方をチラリと覗き、一言発する彼。

う〜ん‥そのツンとした口調も好きだなぁ。


――――――


『…準備できたけど?』

僕がトイレに入っている間に準備を済ませている彼。…‥早っ。


「うん、行こ。」


2人で楽屋を出、満天の星空の下を歩き始める。

今日は星が綺麗だ。

『綺麗だな。』

空を見上げながら話す彼。

―お、喜矢武さんはこういうの興味無い人だと思ってたのに。


「本当だね。」


『…やっぱ思ってんの?』
歩みを進めながら続ける彼

「?‥ぅん。…だって綺麗じゃんか。星達‥」

質問に答える僕。


『俺、星のこと言ってねぇし…』

苦笑いして僕を見てきた彼。

「え?…‥」


『‥あなたの事を言ったんですよ。鬼龍院さん。』

そう言うと、優しく両手を握り締めてくる彼。
…そのクリっとした女の子のような瞳で僕を見つめてくる。


「ぇ、ぁ、ぁの‥喜矢武さん?‥え…‥何?」


『…鬼龍院さんの横顔すんごく綺麗』


握っていた手を放し、僕の頬へ移すと細い指先で優しく撫でてくる喜矢武さん。

「ん。‥喜矢武さ…ん、くすぐったいよぉ‥」

『綺麗な顔、もっと見せて?…ね。』


そういうと、僕の正面に喜矢武さんは立ちはだかる。

僕が驚きの表情を見せたのも束の間…
彼は一瞬にして僕の後頭部と顎を優しく包み、唇を軽く塞いできた―――
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