ふみ

□香り
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今日はオフ。

部屋で1人「何しよっかなー」と考えているところ。

「……んー、する事ない。」


床に身体を転がし瞼をゆっくり閉じる。
「うん。寝よ」





――――――――



『、、きりゅーいんさーん……』

…いきなり頭ん中に喜矢武さんの声が響きわたった。

もう、夢にも出てくるなんて…喜矢武さんたらー


『風邪引きますよー……』

―肩を掴まれて揺さぶられてる僕。この揺れ具合も気持ち良いよ…

……………え。




…………え?誰!?


焦って瞼を開けると整った笑顔が此方に向けられていた。ぁれ…


『起きた…?』


「…ぅん。喜矢武さん、、どしたの…‥?」



『鬼龍院さん不用心だなぁ。―これ、届けにきた‥』



身体を起こした僕の目の前に差し出されたのは見覚えのある鍵。



「?…‥。あぁあぁぁッ!!僕んちの鍵ッ!!!」


『‥うるさい。だから持ってきてやったろ。…昨日忘れてよく気付かなかったな?…鍵は開きっぱなしだし。』


「!?‥」

言われてみれば、鍵を閉めた覚えなし!




『鬼龍院さん疲れてるんだね…。俺来たときから寝てたもんな。』

「そんな、寝てないよ…」
寝てても30分くらいでしょう…



『2時間。…俺着いてからそんくらい寝てたと思うよ‥』


喜矢武さんがこの部屋で2時間も待ってくれたの!!?……うっそぉ。


「…起こしてくれたら良かったのに‥…」


『だって…‥』



口ごもる喜矢武さんが可愛い。



『‥鬼龍院さんの匂いがすんげぇ心地良くてさ。…寝顔に寝姿だって、喰っちゃいたいくらい可愛いーんだもん。』


「ぇ……?」

前言撤回。

喜矢武さんは可愛くはないらしい。どちらかと言えば変態に近いタイプなんだと思う…。



『‥だからさ。』

「?…」


何を言うつもりなんだ、僕の愛しの喜矢武さん…。




『抱き締めさせて?』

「はぁ!!?何言ってんのさ…」



『‥鬼龍院さんの匂い、もーっと嗅ぎたいの…』

然り気なしに、僕を潤んだ瞳で窺ってくる喜矢武さん。
…うわ、喜矢武さんの上目遣いはAVよりエロいよ…。

「…‥…‥‥。」

何も言えずに固まる僕の脇の下から両手を差し込み、背中に腕を巻き付けた喜矢武さん。



『‥やっぱ良い匂い。鬼龍院さん…』


甘い声が耳許で囁いて、僕の頭はとろけるだけだった。




おわり。

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