□夫婦喧嘩なら他所でやれ!!
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「ね、ねぇ…リクオ君どうしちゃったの?」
「さぁ…」

清十字怪奇探偵団の面々は只今いつもの小旅行中。
しかし、いつもの"良い奴"の奴良リクオがゴゴゴゴゴッと不機嫌さを隠しもしない様子で空を睨んでいる。

「カナぁ、話しかけてみなよ〜」
「え、」
「幼馴染みでしょ?ね、お願い!」

この空気に居たたまれないのはよく分かるが、幼馴染みだからと言って話しかけられる程カナも強くはない。
まず、怖すぎるのだ。
正反対にいる白い人影が…

「及川さん、どうしたんスか?」
「いえ、別に。」
「え、でも…」
「放っておいて下さい。」

チーン…と、頭を下げてよろよろ戻ってくる島。
そう、リクオだけではなく氷麗まで不機嫌なのだ。
絶対零度の微笑みは流石雪女と言いたくなる程冷たい。

「…えっと、ドンマイ島」

思わず言ってしまった巻に島が食らいつく。
涙目で。しかも、微妙に震えながら。
そして、その怒りの矛先が絶賛不機嫌中のリクオに向かった。

「奴良!お前及川さんに何したんだよ!!」

血の涙を出さんばかりの訴え。
…だが、不機嫌なのはリクオも同じく。
昼の姿にも関わらず夜の妖の主ばりの声音で、答える。

「あ゙ぁ?」
「!!」

憐れ島。
氷麗ばかりではなくリクオにまで睨み付けられ、
今度こそ死を覚悟する。
見守るカナ達もまた百物語組の化け物を切り捨てたあの時のリクオを思いだしゾッとする。
そして、助けてくれとばかりにこちらを見る島に、心のなかでソッと"ごめん、無理"と呟くのだった。

「……はぁー…」

その一連の動作に目もくれずリクオは深い深い溜め息を吐き出し、清継の別荘があるここ北海道の空を見上げる。

「…溜め息を吐きたいのは私です。」

いつの間にやら逃げ出した島の代わりに突っ立っていたのは絶対零度の微笑み雪女との氷麗である。
隠しもしないその黄金の瞳は苛立ちに細められている

「大体何故泥酔しきるまでお酒を飲むのです?
自分の配分も分からぬほど若は子供なのですか。」

その言葉に今度はリクオが怒りを押し殺して話す。

「子供子供ってなぁ…
僕だってちゃんと元服してんだよ…ッ」
「妖怪のお姿では、でしょう。
貴方はまだまだ高校生です。子供です。」

段々と俯くリクオ。
そして、比例するかのように薄暗くなる空。
ゆらりとリクオの体が揺らめきだす…

「…ざけんなよ、氷麗…」

ドンっと低い声がリクオから漏れる。
それには氷麗含めカナ達も驚くが、氷麗はまだ夜の姿となったリクオをにらみ続ける。

「…大体お前が黙って酌しねぇから…」
「私でなくとも毛倡妓がいるではないですか!!」
「お前が良いって言ってんだろ!!」
「なっ…少し待ってくれれば良かったのです!!」
「あ?何で俺が待たなきゃいけねぇんだよ。」
「夕食の後片付けがあるんです!!!」
「それこそ毛倡妓がいるじゃねぇか!」

火山が噴火したかのように激昂し怒鳴り散らす二人。
飛び火が来ないうちに逃げなければと、抜き足で歩き出すカナ達にある単語が飛び込んでくる。

「だからって、これ見よがしにキスマークつけてこなくてもよいではないですかぁ!!」

金色の瞳から涙がポタポタとこぼれ落ちる。

「キスマーク…?」

え、キスマークって!っと、慌て出すカナ達をよそにリクオはポカーンとしている。

「…おい、氷麗…そのキスマーク…どこにある…」

…と、思いきや顔を真っ青にして氷麗に問う。

「まぁ!ご存じないんですかぁ!!?」

またもや大噴火する氷麗とともにカナ達のもとで少々違う火山が噴火する。

「リクオ様の馬鹿ァァァ!!!」
「本当に知らねぇんだよ!!」

と、また喚き出す二人の影で隠れるように呟く。

「奴良って以外と…」
「キスマークって…」
「リクオ君…」

若干一名は顔を凍りつかせて呟くが、他二名はニヤニヤと笑いあっている。
…と、ここでリクオの口から問題発言が…

「どこの世界に嫁もらったばっかで浮気する男がいるんだよ!」
「ここにいるではないですか!」
「してねぇって!!」
「じゃあ、昨日はどちらに行ってらしたんですか!」
「う…えぇと」
「ホラ!言えないじゃないですか!!」

嫁?
…と喧嘩している二人以外が呟く。

「化猫屋だよ!!これで良いんだろ!?」
「いいえ、まだです!そのキスマーク!!」
「だからどこにあるんだよ!!?」
「…っ!もう!ここですよぉ!」

バッとリクオの着流しをはだけさせる。
…と、その首筋に1つ赤い印が…

「…きゃあ!」

突然の半裸に叫ぶカナ。

「馬鹿お前…コレお前がつけたんだろーが!!」
「…え?…ええぇぇぇ!?」
「俺だけズルいとかいってお前がつけたんだ!」
「えぇぇぇぇぇ!!?嘘、嘘ぉぉ!!」

そう言われてみればあの祝言の日。
お酒に酔った自分が何かしたような。
…と朧気に思い出す氷麗。

「お前、自分に嫉妬か?」
「嫌ぁ!…風声鶴麗!」

ゴォッと冷たい風が吹き奴良リクオ、半裸の氷の彫刻が出来上がる。

「ごめんなさぁぁぁい!!」

そして、ダッシュで逃げる氷麗。
ここに居合わせた全員が思ったこと…それは。

『夫婦喧嘩なら他所でやれ!!』

だったとか。
そして、氷の彫刻にされたリクオ共々氷麗以外全員が風邪をひき数日寝込んだとかなんだとか…


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