書
□左様なら頼も
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明日の俺の誕生日は
一緒に居てくれるって
言ってた
リリスからの電話
電話口で震える声を聞いた時、ただ事じゃないと思った
思ったけど…
なんでこうなるわけ?
病院に行ったら頭抱えて泣きそうなリリスがいた
無理やり聞き出した数字の部屋を探しながら走る俺
そんな俺を白衣姿の人達が注意する
他の奴らどうでもいいんだよ!!
心のなかで叫び
見つけた三桁の数字を見て安心する
安心?
違う
本当に事故ったんだ…と実感しちまって
本当は泣きそうなんだ
スッキリした室内
スッキリした配色
スッキリした肩
黒髪に白の包帯
名前を叫んで駆け寄ると、こっちを向いた
少し困り顔だ
誰もいないことを良いことに思い切り抱きついた
傷口にあたったのか、うめき声がした
気にせず抱き締める
心配したんだ
ここまで来る間に、どんだけ崩れそうになったか…
腕
ないじゃん
抱き締めてくれる腕がない
大丈夫?
痛みを与えておきながら、質問する自分は何と愚か
え……
どちら様……って
なに?
結んでた髪をほどいていつもの髪型になる
もう一回聞いた
どちら様って何のこと?
記憶……無いんだ
あ
そう
頬を思いっきりぶん殴って、病室をでる
頭までスッキリしちまったかっ
走る俺をまた白衣姿の人間が注意する
うるせぇ!
声には出さず
心で叫ぶ
今「うるせぇ」って思ったでしょ?
そう言って
だめだよと諭してくれる人は
俺を覚えていない
なんだ
俺は簡単に忘れられるような存在だったんだ?
病院の庭の、人がいないことを探して走る
立ち止まって抑えてた涙をぶちまける
木に縋って泣き出す
名前を呼で更に泣く
俺の世界が終わったようだった
見苦しい泣き様を隠してくれる胸はなくて
苦しい時に抱き締めてくれる腕は存在しなくて
苦しい俺を抱き締めようと思う頭はどっかに行ってしまって
明日の俺の誕生日は
一緒に居てくれるって
言ってた
リリスからの電話
電話口で震える声を聞いた時、ただ事じゃないと思った
思ったけど…
なんでこうなるわけ?
ねぇ、なんで腕がないの?
なんで頭空っぽで平然とした顔してこっち見たわけ?!!!
泣けるだけ泣いて病室に戻った