現在拍手お礼文

□ありがとな
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おいちょっと聞いてくれ。
いや、むしろ助けてくれ。



「…………」

「…………」



この重苦しい空気は一体いつからだっただろう。
そして、一体いつまで続くのだろう。

ゾロは男部屋で横になっている。
その傍らには、



「お、おい……」

「何」

「…………いや」



鬼のような形相をした、この船の一員。
指先ひとつ動かせば見えない槍とかで刺されそうな勢いだ。
実際、きつくきつく包帯を巻かれたせいでぴくりとも動かせないのだが。
何とも言えない緊張感に、ゾロは自然と強張っていく。

ふと横目に見やれば、何か言いたそうに眉を寄せた彼女がいた。



「……」



そのくせ声をかけても“何か用”オーラ全開だ。
疑問符すらない。
意地っ張りというか、負けず嫌いというか。
知らず軽く溜息を吐けば、隣がピクリと反応したのが分かった。



「…………言いたいことがあるなら言え」

「…言わない」

「何でだよ」



何か言いたい、言ってやりたいという空気丸出しのくせしてまだ意地を張るか。
こうなったらこっちだって意地でも言わせてやる。
おちおち寝てられねェんだよ、んな引っかかるような顔されりゃ。



「言えって。気になるだろうが」

「気にしなくていい」

「無理だろ」

「無理じゃないわ。無理って決めるから無理なのよ」

「何の話だよ」



こいつがここに来てからこっち、一度も俺と目を合わせようとしない。

何か用かと聞いても無言が返ってくるだけ。

ほんと、こいつ何しに来たんだ。



「……言ったって何も変わらないもの」

「あ?」

「…………変わらない。その傷が消えるわけじゃない」

「?何の……」

「分かってるから、言わない。邪魔だけはしたくない」

「…………」



ああ、なんとなく。
分かってしまった。



「……悪かったな」

「何で謝るの。悪いなんて思ってないくせに。どうせまた懲りずにボロボロになって帰ってくるくせに」

「バレたか。じゃあ……」








ありがとな

お前がこうやって迎えてくれるから、俺は何度でも戻ってこれるんだ。
この場所に。





拍手ありがとうございました!


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