様々な100のお題
□今までのお題
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「ねぇ、あっちに見えるのは何?」
「あれはナミのミカン畑だな」
「じゃああれは?」
「あれはウソップの発明品だ」
「じゃあ……」
いつまで続くのだろう、君からの質問は。
「記憶喪失……」
「うん……」
朝のキッチン。
小さな医者はその姿をさらに小さくさせて、そう呟いた。
「な、なんでいきなり……」
「わかんねェけど……」
「何もわからないの?」
「うん、おれ達のことも、自分の名前すら」
「…………」
昨日まで、それこそ日付が変わるその時まで。
彼女と一緒になってこの船で騒いでいたのに。
――誕生日を迎えるんだから、お祝いしよう!
そういうことには目聡い船長が叫んだ昼下がり。
夜は盛大に祝福しようと、クルーの皆がパーティーの準備に取りかかった。
私も手伝うと言った彼女に、主役は特等席でお待ちなさいとナミは促した。
最初は躍起になって手伝うと言っていた彼女も、クルーの温かな気配りに観念し、座ってその時を待つことにした。
そうして迎えた夜は、結局は宴会になり。
誰もが予想していた展開に彼女は声をあげて笑っていた。
そして宴の最後に言ってくれたのだ。
『私、今までで一番幸せだよ』
『一生、忘れない』
言葉で紡がれる約束は、なんて脆いものなんだろう。
もはや約束と呼べるほどの何かを交わしたとも言えないのに。
「……祝わなければ、良かったのかな」
不意に呟いたチョッパー。
小さな呟きはキッチンに大きく響いた。
「それは違うぞ、チョッパー」
「ルフィ……」
ルフィは静かに席を立ち、クルーを見渡す。
違和感を抱きつつも、次に続く言葉を探す。
―ひとり、足りない。
「おれ達は祝って正解だった」
すっと瞳を閉じたルフィ。
頭の中で流れるのは、とある島で聞いた、たったひとつの“真実”
それを知るのは、自分だけでいい。
「あいつの誕生日だぞ、祝って当たり前だろ」
だって、言ったんだ。
幸せだって。
だから間違ってない。
あいつが幸せそうに笑ったのも、たったひとつの“真実”なんだ。
だから。
「ねぇ、あれは何?」
「あれはゾロが筋トレ用に使うおもりだ」
「じゃあ、あれは?」
「あれはロビンが世話してる花壇だぞ」
「ふーん…じゃあさ、」
残酷な言葉
キミハダレ?
そう問われたときの心臓は、きっと止まっていた。