薄桜鬼 長編

□非番
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『あつい…』
山「美葵、だらしない。きちんと座れ」
『あつい〜』
山「あついなら、くっつくな」
『やだ』
山「………」


先程からこの会話を何回か繰り返している。
俺が副長に預けられた仕事をしていると、今日は非番らしい美葵が部屋にきて、床に転がっていた。まぁ、そこまでは良かったのだが、そのあと、俺の腰に手を回してまとわりついてくるから、仕事がはかどらない。


山「…美葵、いい加減離れてくれないか?」
『やだ』
山「斎藤さんは?」


同じく非番のはずだった、斎藤さんの名を出してみるが…


『だって、一兄、仕事してんだもん!』
山「あぁ、さすがは斎藤さんだな」
『烝兄?』
山「なんだ?」
『烝兄はさ、変若水、どう思う?』
山「あれは、副長がお決めになったことだ。いまさら、なにをいう」
『はぁ…。みんな揃って副長、副長。自分の意見くらい持ちなよ…。意味分からん』
山「…言ってもいいものなのか?」
『…は?』
山「いや、なんでもない」
『言ってもいいんじゃないかな?別に、言うくらい』
山「(聞こえてるのか)…あまりいいものではないように思う。だが、仕方ないことだ」
『そっか…』


しばしの沈黙があって、俺は一つ気がついた。


山「美葵」
『なに?』
山「君はどこの出身だ?」
『伊賀』
山「だからか、馴染みのある訛りが入っている」
『烝兄、大坂だから』
山「言ったことあったか?」
『ううん、調べた』
山「…なるほど(おれも調査対象か…)美葵は直したのか?」
『まだ、抜けないし、仕事だとよく使うかな。そっちの方がみんなよく話してくれるしさ。烝兄は?』
山「おれも直したな。だが、ぬけきってはないようだ」
『やよな〜』
山「ところで美葵」
『ん?』
山「いい加減離れろ」
『やーだ』


美葵が部屋にきてから、この行動の繰り返しだ。


山「…たまにはいいか」
『何が?』
山「何でもだ」
『気になる〜』
山「離れたは教えてやる」
『じゃあいい』
山「何でそこで、いい、となる…」


とりあえず、目の前の仕事を片付けようと思う山崎。よく似た会話がまた、始まるまで、あと半刻。
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