短篇集

□もしも八田が非童貞の男前だったら
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※Caution※
バカ可愛い八田ちゃんはいません!ちょっと大人で性に慣れた八田ちゃんが生息しているので「それはねぇわ」と思われる方はバック推奨です!ご注意くださいませ!
エロは最後にほんのちょっとある程度です。




吠舞羅に中学を卒業して間もない少年が入ったことは記憶に新しい。そして、その二人のうちの片方は中々に扱いの難しい少年だと、新入りの世話役を受け持っている人付き合いの得意な十束でも手を焼いていた。

今日もBAR.HOMRAは騒ぎ倒す青年たちのおかげで喧騒としていた。それを見兼ねた草薙が怒声を飛ばすのも、普段どおりの光景。そして最近新たに見慣れたものとなったのが、誰と会話をするでもなくバーカウンターの一番端で一人つまらなそうに頬杖をつく少年の姿。彼は誰がどう見ても吠舞羅に馴染めていない、というより馴染む気がないといった方が正しいだろう。

その少年、伏見はこのBAR.HOMRAという場所が、否、それどころか吠舞羅というチーム自体が好きではない。伏見は元々騒がしい場所が嫌いである。こんな野郎共がただただバカ騒ぎをする空間(だと伏見は思っている)に自分がいるというだけで、具合が悪くなる。それに加えて、伏見が最も不快感を覚える出来事が、毎日のように伏見の数メートル離れたところで起こっている。

ムカつく気持ち悪い吐き気がする。日々そう感じながらも、自分一人が過去に取り残されるのはもっと耐えられず、八田に追い縋るように懲りずにこの場所に足を運ぶ自分自身に嫌気がさす。伏見はこめかみを押さえ、頭の鈍痛に舌打ちを一つ溢し椅子から立ち上がる。


「ん、伏見帰るの?」

「…はい、失礼します」

伏見は十束の顔を見もせず無愛想にぼそりとそれだけ言うと、扉の方へと足を進める。もう何も自分の中に入れたくない。早く一人になりたい。

「おい、猿比古。なんだよ帰んのか?」

そんな伏見の心境を知らずに腕を掴み引き止めてくる人物を振り返り、伏見は一層眉間の皺を深くする。

「美咲には関係ないだろ。…離せよ」

不機嫌な内心を隠すこともせずに八田の手を振りほどこうとする伏見だが、がちりと掴まれた腕は離される事はなくむしろより強く握られる。伏見が不満げに八田を見やれば、八田の鋭い瞳がぎらりと光ったかと思うと、小柄な身体のどこにこんなエネルギーを溜め込んでいたのかと思う程の力で腕を引っ張られる。

「なっ…ちょ、みさ、きっ…」

「草薙さん、ちょっと二階借ります」

八田はその腕を掴んだまま、納得いっていない様子の伏見を引きずるようにして二階へと向かう。それをぽかんと呆けた様子で眺める一同を余所に、事情を察した草薙と十束は顔を見合わせ、子供達の先行きを親のように暖かく見守った。



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