短篇集

□友情の域を超えています
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吠舞羅には、将来有望と思われる二人の少年がいる。同時期に吠舞羅に加わった、八田美咲と伏見猿比古。戦闘形態はまったく異なるが、双方赤の炎を十二分に自分のものにしており、今後吠舞羅にとって大きな戦力となる事は間違いない。そんな心強い少年たちであるが、吠舞羅の参謀兼No.2である草薙は前々から気になっている事があった。

「…最近の若い子はあないにべったりなもんなんかなぁ」

至極真剣な表情で携帯ゲーム機に熱中する八田を、至極当然のようにまるでぬいぐるみを抱えるように後ろから抱き締める伏見を草薙は渋い顔で見つめる。伏見の足の間にすっぽりとはまっている八田も、違和感を感じている様子はない。

「まぁまぁ。草薙さんだって俺と会ったくらいの時はキングとべったりだったじゃない」

「いやつるんではおったけど、べったりではなかったわ。お前は何とも思わへんの?」

「んー、そうだねぇ…」

十束は何かを含んだように普段どおりのまったりとした口調で相槌を打つ。十束も思うところはあるのだろう。しかしその他の吠舞羅の面々は、そんな八田と伏見の様子を不審がるものはいない。あまりにも毎日その光景が繰り広げられているためか、皆見慣れてしまったらしい。

「でも俺、あの二人見てるの結構好きなんだよねぇ」

そう言うと十束は「八田〜」と少年二人の方向に視線を移し、手招きをする。それに気付いた八田は先程まで熱中していたゲームを中断し、座っていたソファから立ち上がる。何をするでもなく八田を抱え込んでいた伏見は、離れた温もりに切なげに眉を潜める。そんな伏見の腕を掴みぐいっと引き上げ、立ち上がった伏見を自分の背中に覆い被せるようにして、頭だけ振り返り伏見の顔を見上げる。

「離れると寒ぃからお前も来い」

「…ん」

僅かに照れたように視線を下げいそいそと八田の後ろを付いていく伏見に、先程まで苦言を呈していた草薙もその健気な姿に何とも言えない思いを抱く。

「十束さん、何か用っすか」

伏見を引き連れ十束の前までやってきた八田と、八田よりも随分高い身長でちょこんとその後ろに付き添う伏見を交互に見比べ、十束は草薙に向き直る。

「なんか、昔流行った主人の後ろを付いてくる生き物みたいで面白くない?」

「お前、ほんっとフリーダムやな!」

二人のやり取りに頭に疑問符を浮かべる八田と伏見を余所に、十束は楽しそうに朗らかに笑い、草薙はそんな十束を呆れたように眺め嘆息した。



End.
 

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