短篇集

□青い空が見たいだけ
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伏見も吠舞羅の設定で多猿の監禁モノ。
十束さんがはっちゃけてて、伏見がかなり弱ってます





昔から、欲のない性質だった。何となく手に入れてみる物はあっても、自分自身が心から本当に欲しいモノなどなかった。それが、初めてどうしても手に入れたいと思えるモノが出来た。そのどうしても欲しいモノが、たまたま物じゃなくて人間だっただけの話。そんなに可笑しな話でもないでしょ?




十束の目の前でベッドに力なく四肢を投げ出し横たわる少年は、ぴくりとも動かない。否、動けないの間違いだろう。毎晩好き放題に蹂躙され、酷使された疲労した身体では身を起こすことも出来ないらしい。その少年、伏見の額に十束が優しく口付けを落とせば、彼は重い瞼を持ち上げる。黒縁眼鏡の奥の暗い瞳にもはや光はなく、それは唯々絶望の色に染まっている。

「伏見、今日は何して遊ぼうか?」

楽しそうに笑う十束は、うーん、そうだなぁ、などと言葉を漏らしながら戸棚を漁っている。そして其処から選び出したびっしりとイボが付いた太いバイブを手に、それを嬉々とした表情で伏見の眼前に突き出す。

「今日はこれにしよっか。伏見、これで中ぐりぐりされるの好きだもんねぇ」

男性器を模したグロテスクなその玩具を片手に、それにそぐわぬ笑顔を浮かべて十束はそう提案する。虚ろな瞳をその玩具に向ける伏見は、瞳に僅かに恐怖を滲ませる。しかし、彼に拒否権など最初から存在しない。両足を開かされて露になった秘部に、十束の白く細い指を銜え込まされる。昨夜も散々に犯され尽くした其処は、ずぷずぷと嫌らしい水音を立てながら、難なく十束の指を受け入れる。存分に慣らされた内壁を指で擦り上げられ、伏見は甘い嬌声を上げる。

「ひ、ああァ…ふァ、んン…」

足をびくびくと痙攣させ、伏見は力なく首を横に振る。身体はとうの昔に悲鳴を上げ、毎晩休みなく行われる一方的な蹂躙に限界を迎えている。自尊心など、この部屋に閉じ込められて、死にたくなるような恥辱に塗れた行為を強制されすぐに粉々に破砕した。今伏見が何より優先するのは、自分に降り掛かる酷い凌辱から少しでも逃れる事である。そんな伏見の事などお構いなしに、十束はにっこりと普段通りの笑みを浮かべたまま暫く伏見の中を掻き回し、指を引き抜く。そして先程の玩具を伏見の秘部へと押し当てる。

「ひっ…や、あ…!やら、や、やァ」

不規則な呼吸の合間に引きつった声色で必死に懇願する伏見の瞳からは、とめどなく涙が溢れる。散々此処に連れてこられるまでは未知だった感覚を教え込まれた伏見は、この後訪れる気が狂う程の快楽に怯えている。しかし、泣いても喚いても、十束が伏見を辱める手を止めることはない。

「平気平気。最初は嫌がってても、伏見いっつもちゃんと気持ち良くなれるじゃない」

だから泣かないで、と十束は優しく伏見の涙を拭う。しかしそれは逆効果で、頬に触れられた伏見はびくりと身体を揺らしガタガタと震えだす。伏見からすれば、どんなに優しい態度を取られようが自分を監禁し、凌辱の限りを尽くす十束は恐怖の対象でしかない。十束は困ったように眉を下げて笑いながら、容赦なく玩具を伏見の中へと挿入する。太いバイブに内壁を限界まで広げられ、その圧迫感と脳天まで突き抜ける衝撃に伏見の白い喉が仰け反る。

「ぅああああァ…!」

乱暴に秘肉を突き上げられ、伏見は堪らない刺激に切なげに甘く啼く。玩具のイボが容赦なく前立腺のしこりを押し潰し、その狂おしい程の快楽に伏見は泣きじゃくる。

「ひあっあァ、やッ、はああァ…ッ!」

心がどれだけ止めてくれと叫んでも、身体はそれを嘲笑するようにきゅうきゅうと内壁を擦り上げる玩具を締め付ける。心と身体がバラバラになるような感覚に、与えられる快楽への恐怖の他に内から沸き上がるような恐怖がない混ぜになり、伏見の意識を掻き回す。朦朧とする意識の中、伏見は頭で思考する事なく無意識のうちにある名前を口にしていた。

「……み、さ…き…」

伏見にとって、唯一心を許せる相手。自分の中に踏み込んでくる事を許す、唯一の存在。自分の心を守るために紡がれたその名は、しかし伏見を助けはしなかった。

「ひぐ、あああァ…!ひ、やぁっあァン…ひッ!」

「言ったでしょ、伏見。その名前は言っちゃダーメ」

普段と変わらない十束の声色に、伏見は現実に引き戻される。そして、情事中に十束が最も嫌う名前を口にしてしまった事に気付き伏見の背筋が凍る。

「ひ、や、ごめ、なさッ…ひあァ、と、つかさ…まって、まっ…ひッ!」

伏見の弁解に耳を傾けることなく、十束は何処からか取り出した細い紐で伏見の自身の根元を縛る。そして十束がカチリと玩具のスイッチを押せば、それは無機質な音を立てて振動を始める。奥まで埋め込まれた玩具が無情にも伏見の最も悦い場所を抉る。

「ひ、あッああァ…!」

「禁止ワード言ったお仕置き。三時間後にまた来るから、それまでその玩具で遊んでてね〜」

笑顔で吐き出された無情な言葉に、伏見は瞳を見開き絶句する。暴力的なまでの快感に、目の前が水の中に落ちたようにぐにゃりと歪む。今すでにこんなにも辛いのに、三時間も耐えられる訳がない。その痛みと性を吐き出せない苦痛に身体が悲鳴を上げる中、伏見は必死に言葉を絞りだし十束に懇願する。

「ひっ、く…い、たい…や、ああぁ…む、り…むりィ…!」

「ダメだよ、可哀相だけど我慢してね。伏見は賢いけど、八田が絡むと中々俺の言うこと聞いてくれないから、身体に覚えてもらわないとね?」

伏見の哀願も虚しく、それじゃあまた後でねぇ、とへらりと笑い十束は部屋を後にする。背後からは可哀相なほどに必死な伏見の泣き声が聞こえるが、十束は甘やかす気はさらさらなかった。

十束が人生で初めて欲しいと望んだモノは人間だったが、今となってはもう彼の所有物、玩具だ。しいて言うなら心はまだ堕ちきっていないから、中までしっかり壊してやればこの可愛い哀れな少年は完全に自分のモノになる。

「お前が俺の事しか見えなくなるように、しっかり心も壊してあげる」

すぐに、その真っ暗でとっても綺麗な瞳には俺しか映らないようにしてあげるから。扉の前で振り返りそう言って笑う十束の声を、伏見は何処か遠くで聞いていた。狂おしい程の快楽に犯されたままのぼんやりとした意識の中で、僅かに、本当に僅かに残された自分の正常な部分が叫んでいる。誰か、助けて。此処から出して。心を完全に壊されて何もかもわからなくなってしまう前に、頼むから、誰か。


(…――たすけて、みさき…)


叫びは声になる事なく、悲痛な甲高い嬌声に飲み込まれた。




END.
 

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