dream

□San Valetino
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「そうだ、夕食が要らない人は前日までに言ってよね」
恋人たちがいつもに増して甘いひとときを過すであろうヴァレンティーノを一週間後に控えた二月七日、ナマエの一言で、騒がしい食卓はほんの一瞬だけ静まりかえった。
「オレら、要らないわ」
「うん。他所で食べるから」
「分かった。他にも予定が入った人は都度教えてね」
「ナマエ、もしかしてヴァレンティーノも夕食作るつもりなわけ? ていうか相手は居ないわけ?」
「……メローネ、それは今の一言で察するところでしょ」
今のごく短いやり取りで分かるようにナマエには当日一緒に過ごす恋人がいない。当然街にカップルが溢れかえるであろう日にわざわざ他所で外食するほど苦行好きでもM体質でもないので、同じく相手のいないメンバーたちと普段どおり一緒に食事をしようと決めているのだ。
「ナマエ、オレもいい」
「あ オレも」
「オレも。悪ィなナマエ」
別に謝る必要はない。嗜好がバラバラなメンバーの食事をほぼ毎日作っているナマエとしては、献立を考える頭を悩ます要因は少ないほど良いのだから。早速報告してきたソルベとジェラート、プロシュート、あとホルマジオあたりまでは予想通り。ただメローネについては……いや、容姿だけは無駄に整っている、その他の要因が残念の一言だけでは収まりきらない。特に服のセンスとか性格とか性格とか性格とか。そんな彼とヴァレンティーノを一緒に過ごす奇特な女性が実在するというのが驚きだ。
 
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