進撃ブック
□Salvia
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『リヴァイー朝だよー』
遠征当日。
出発の3時間前にリヴァイを起こしに兵長室へやってきた。
『リヴァイ、起きて』
寝台の傍まで来てみるが、リヴァイは小さく唸って寝返りを打つだけ。
仕方ない。リヴァイは低血圧だから朝に弱いのだ。
だからこのまま寝かせておいてあげよう―――なんてことにはならない。
『リヴァイさーん!おはよーございまーす!』
「…………うるせぇ」
『おっ…?』
起きた?と思ったのは気のせいだったようす。リヴァイは薄く目をあけて僕を睨むと枕に顔を埋めて再び寝息をたて始めた。
『…………リヴァーーーイ!!!』
今日は何としても起こさなければならない理由があった。勿論、今日は大事な遠征があるからというのもあるが、もう一つ違う理由があるのだ。
なので、激しく体を揺する。
『起きてよリヴァイ!聞いてほしいことがあるんだって!さっきエルヴィン団長のところに行ったんだけど――っ!?』
途端、視界が反転した。
「他の男の部屋に行くとは、早速浮気か?」
眠気はどこへやら。
視界一杯に映るリヴァイは不機嫌な中にも僕をからかっているような笑みを浮かべていた。
『そう簡単に浮気なんてできないよ。心臓捧げちゃってるんだからさ』
そんなことしたら心臓を握りつぶされて死んでしまう。
「………それもそうだな」
リヴァイは暫く面食らって眉間に皺を寄せて笑った。
最近、リヴァイはよく笑う。
ケーキを食べた時なんかは眉間の皺もとれてしまうくらいだ。前にハンジがその光景を見て天変地異の前触れとも言っていたか。
とにかく、それだけ珍しいものが頻繁に見れるようになって僕は凄く喜んでいた。
「何がおかしい」
思わず頬が緩んでいると、リヴァイが訝しげに僕を見た。
『いや、嬉しいなあって』
「嬉しい?」
『僕が原因でリヴァイが笑うようになったんなら、凄く嬉しい』
あ、皺なくなった。
吃驚すると眉が上がるから眉間の皺はなくなっちゃうんだよね。
『って苦しい!苦しいよリヴァイさん!!!』
眉間を触ろうと手を伸ばしたら思いっきり強く抱きしめられた。出る、色々と出る!
「一時間経ったら起こせ」
『寝るの!?』
それ以降、返事が返ってくることもなく…
なるほど僕は抱き枕ってわけか。
『…………まあ、一時間後でいいか』
結局、言いたいことも言えず、しかしこれ以上無理にリヴァイを起こす気にもなれなかったので僕は一時間だけ、と低血圧な割には温かい背中を抱きしめた。
『おやすみ』
起きたらお目覚めのコーヒー淹れなきゃ。
「リヴァイとソーマはまだか?」
「んー?そういえば来てないね」
遠征出発1分前にギリギリ飛びこんだのは言うまでもない。