進撃ブック

□Linaria
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 「チッ!」

 腹が立つ。
 エルヴィンは何を企んでいやがるんだ。ソーマだけの特別作戦だと?ふざけるな。


 バギャッ!!


「おおうっ!?」

「…………あ?」

 自室のドアを蹴って開けると、奇声を発するハンジがいた。

「ハンジ……」

「えっ、なんでそんな怒ってんの?何か悪いことでもあった?」

「そうだな……しいて言うなら…」

 こいつの髪は太くてあまりさわり心地がいいものではない。

「人様の部屋に無断で入り浸っているクソメガネ野郎にイラついている」

「いだだだだっ!!もげる!!髪束もげる!!!」

「チッ」

 気が済むまで馬のしっぽを引っ張って離してやるとハンジは涙目になりつつ情けなく呻いている。

「うへぇ………で、どうしたのさ」

 ハンジは髪をすきながらソファに体を沈め、俺は机に向かう。
 
「…………チッ」

 マグカップを手にとるが、中身は入っていない。代わりに微量のコーヒーが底に固まってこびり付いている。
 そういえば、最後にコーヒーを淹れてもらったのはいつだっただろうか。

「どうせソーマのことでイライラしてるんでしょ?」

「!」

「あ、貧乏揺すり止まった」

「……していたか?」

「してたよ。もしかして無意識だった?」

「……………」

「図星ってわけね〜」

 それは貧乏揺すりに対してか、それともその原因に対してか。
 おそらく後者の方だろう。現にハンジは気持ち悪い笑みを浮かべている。

「リヴァイ、ソーマのこと好き?」

「…………」

「好きだから、片時も離れたくないから団長に物申したんでしょ?」

「聞いてたのかよ」

 ごめんね、と舌を出して謝るハンジ。

「でもそういうことでしょ?」

「………うるせぇ」

「否定はしないんだ」

「!…」

 こいつとの付き合いは長いが、未だに何を考えて、その笑みの下に何を思っているのか全くわからないでいる。
 簡単に言えば、読めない奴だ。
 
「あ、いま私のこと読めない奴って思ったでしょ」

「あ?」

「ソーマも私くらいに感情をコントロールできる人だったらまた違った状況になってたかもね〜」

「全くだ。こっちの身にもなれって……………」

「ニヤニヤ、ニヤニヤ!」

バキッ!

「ごめんなふぁい」

 顔面が腫れあがって見るに堪えない姿になったハンジを置いて俺は部屋を後にした。


(口から聞けないなら体に聞いてやる)

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