黒バスブック
□●○外周するからには覚悟を決めろ○●
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「ファイッオーファイッオー」
サッカー部、野球部、陸上部、テニス部、ソフトボール部などなど、あらゆる部活動が行われている広いグラウンドで帝光中学校バスケ部員たちは白い息を吐きながら走っていた。
そんな彼らを厳しい目で観察している一人の小さな少女。
『……………』
一年生でバスケ部のマネージャーである緋色環奈は部員たち一人ひとりを真剣な眼差しで観察し、それぞれのメニューを考えているところだった。
『今本先輩は右肘を怪我してるから今日は外周を3周追加するとして……柏木くんはシュート練かな。10本中8本は入るようにしてもらわないと…』
ボールペンの尻で軽く頬を叩きつつ、事細かにカリカリとバインダーにはせてある紙に書き込んでいく。
『あとは………ん?』
ふと、今見ている集団に欠落しているものを思い出す。
暫く可愛らしく首をかしげて考えていた環奈だが、すぐにその表情は怒りに染まっていった。
ぐるりと首をめぐらして、先ほどの集団とは約半周遅れている何ともカラフルな集団を視界に入れる。
『………またですか…』
カラフルな集団が水色の頭を取り囲んでノロノロと走っているのを見て環奈は怒り半分、呆れ半分にため息をついた。
環奈の視線が突き刺さっていることは露知らず。カラフル集団―――黒子を中心に青峰、黄瀬、緑間、紫原がまるで意味をなしていない外周をしていた。
「黒子っち、大丈夫っスか?ヒッヒッフーっスよ!ヒッヒッフー!」
「バカかテメェ。生まれるだろうが」
「馬鹿め。黒子は男だぞ。生めるわけないのだよ」
「は?冗談に決まってんだろ。バーカ」
「なっ!?馬鹿に馬鹿と言われたくはないのだよ!!」
「うっわ、俺もしかして馬鹿を馬鹿にした馬鹿に馬鹿って言われた?サイアクだな」
「面倒くさいのだよ?!」
「あーもー峰ちんとみどちんうるせー。静かにできないの?」
「あの…む…紫原くん……頭に手…置かないでくだ、」
「うわああああ!?ついに黒子っちが倒れたぁー!!!」
「テツゥウウ!!」
『………………』
手に持ったシャーペンにピキリとヒビが入った。
火山が噴火する3秒前。