黒バスブック
□●○外周するからには覚悟を決めろ○●
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「おいテツ!生きてるか!?」
「揺するな!余計に負担がかかるだろう!」
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「ちょっ、紫原っち何ずっと見てんスか!?黒子っちを保健室に連れていくっスよ!」
「えーおれー?めんどい」
「ハァ?!元はと言えばアンタが黒子っちの頭に体重かけてたのがいけないんスからね!?」
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「は、ちげーし。丁度良いところに肘置きがあっただけだし」
「黒子は肘置きではないのだよ!」
「ごちゃごちゃ言ってねーで、さっさとテツ運ぶぞ!」
「はいっス!…あ、でもその前に人工呼吸しといた方が…」
――――ベキャァッ!!
『ぉおおんまえら何しとんじゃああああーー!!!』
「ギャアアアアアーー!!!」
「あおみねーーーっち!!?」
「青峰ーーー!!」
「アララー…」
真っ二つに割れたシャーペンが宙に浮いたかと思えば、次の瞬間には青峰がサッカーゴールにフォームレスゴールしていた。
なんともまあ、迷惑なこと。
しかしサッカー部の人たちは何が起こったのか理解できず、あんぐりと口を開けている。
そして場面は再びカラフル集団へと切り替わり…
『コォォォォ……』
「うわわわわ、環奈っち…!?」
「スゲー……環奈ちん、口から冷気出てる」
「なんで人間の口からそんなものが出るのだよ!?」
実際、出ていた。
瞳は夜中の車のライトのような光を放ち、わずかに開いた小さな口からは、触れれば瞬間的に凍結してしまいそうなほどの冷気を放出している。
まるで今の環奈は化け物だ。
『………先輩』
「「「はいっ!!!」」」
滅多にちゃんとしない紫原が背筋を伸ばす。
そうさせるほどの力が環奈の言葉にはあった。
『貴方たち……一体何をなさっているんですか?』
カクン、と壊れた人形のように首が右に傾く。
それを見て3人はビクリと肩を震わせた。
「ななな、何って、そりゃ、外周に決まってるじゃないっスかぁ…もう、環奈っちってば分かって言ってる〜☆」
「「!?」」
「おいっ!!」
「ぐえっ!?」
茶目っ気たっぷりに言う黄瀬の首を緑間の腕が捕らえた。
そのまま一瞬で環奈から距離をとり、グラウンドの隅へと連行。
「馬鹿なのか!?お前は馬鹿なのか!?」
「うぐぇっ、おえぅ、み、みどっ、みどりまっ、ち!吐くっ…はっ……吐く…ッッ!!!」
一旦、黄瀬を解放したかと思えば今度は肩を掴んで前後に激しく揺すぶりはじめた。
口を押さえてがっくんがっくん揺れる黄瀬に構わず緑間は充血した眼で言う。
「これ以上環奈の機嫌を損ねてどうする!?これだからお前はいつまでたっても黄瀬なのだよ!!」
「ちょっ、いみぃっが、わっかんない、ッス」
「それはこっちの台詞なのだよ!!さっきから途切れれ途切れに喋りおって…何を言っているかさっぱりだ!!」
「い、いやっ、そりぇはっ、みどっ」
『それは、みどり先輩のせいかと』
「「!!!!!」」
ズザザッ!というふうに2人揃って後ずさる。
しかし、すぐに体育倉庫の壁に背が当たり、逃げ場がなくなってしまった。
目の前には薄く微笑む環奈。
さらに環奈の後ろには、トラックに倒れたまま動かない黒子、さらにその上に倒れている紫原(伸びた手の先には空になったポテチやまいう棒の袋)、そして…
「うげっ!?……オイィイイ!!ざっけんなよ!!俺が何したってんだよ!ちょっとゴールに突っ込んで網破っただけだろ!?つーか悪いのは俺じゃねぇ!!環奈だよ!!!」
サッカーゴールに括りつけられ、的にされている青峰がいた。
「「………………」」
『さあ、先輩……準備はいいですか?』
フフフッ
2人は気付かれぬように生唾を飲み込み、覚悟を決めるのであった。