私は男のようです。帝光編

□とんだ勘違い
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「でっか、なにこれ」

「中学校」

「いや、それはわかってるけど」



今年、晴れて俺と楓は帝光中に入学
名前も凄いけど学校自体も凄い
とにかくデカい
入学する人数が毎年多いらしいがデカすぎる

俺達と同じように校門を通る直前に呆ける人はおそらく新入生だろう



「あー、やっぱ一緒じゃないな」

「双子を好奇の目で見られるよりまし」



クラス分けを見れば見事に楓と離れた
寂しくも感じるが楓の言う通り珍しいものを見るような視線を感じることが暫くないから気が楽だ

だが



「クラス遠すぎだろ」
「クラス遠すぎでしょ」



お互い思っていることはやはり一緒

俺と楓はクラスが違う
それも教室が大分離れる

クラスが一緒じゃないのは別にいい
だがせめて隣のクラスとかにして欲しい

離れすぎると会いたい気持ちより移動がめんどくさいという思いが勝って会わない








「お、後ろの席」



俺も楓も来年に思いを託して自分のクラスへと別れた

黒板に貼られた座席表の通りに後ろに用意された席に座る
割と早く来たのか、クラスにはちらほらとしか人がいなかった
そのせいか誰も会話がなくて、一人読書をしていたり携帯を弄っていたり
早く来ていることもあって、今クラスにいる人達には俺の中で真面目というレッテルが貼られた

今更楓を追いかけるのもめんどくさくて、机に突っ伏した












ああ、早く来たのだから紅葉のクラスに居座ればよかった、と後悔
読書でもして時間を潰そうと思っていたのにそれすらできないこの状況
何故こんなことになったのか、それが分かるのはさっきから意味の分からないことを言っている目の前にいるコイツだけだ



「運命ってホントにあるんッスね
 まさか同級生で一緒の中学だとは」

「あのさ、さっきから言っている意味が分からないんだけど」

「……え?」



無駄に顔が整っている金髪野郎は間抜け面でも様になっていて顔面を殴りたくなった、が話の腰を折りたくはないので我慢我慢

とりあえず私にこんなバカっぽい知り合いはいない
人違いじゃないの?そう聞けばわなわなと震えて、どうしたのか様子を見れば今にも涙が出そうな瞳が私を捉えた



「そんなことないッス!
 オレンジの髪なんてそういないし、間違えるはずないッス!!
 ホントに覚えてないんスか?
 迷子になった俺にジュースくれてっ

 俺、一目惚れでずっと覚えてたのに!」



どうやらコイツはその誰かがオレンジ頭だったから私だと思ったらしい

生憎迷子と遭遇した覚えはない
だがこの男の話とよく似た話を昔聞いた覚えがある
会わせてやろうか、と思った

だが一つ気になる点がある
この男の口から出た一目惚れという言葉
聞き間違えかと聞き返せば、何故か人が少ないとはいえこれから一年間お世話になる教室で声を大にして告白された

これ以上この勘違い野郎を野放しにすれば入学早々私の名誉が危ない

一目惚れと言っているが相手が紅葉だと知れば勘違いだったと気づくだろう
とりあえず海に行ったときにパーカを着ていた紅葉が悪い



「あんた、それホントに勘違い
 オレンジ頭ならもう一人この学校いる

 私と双子なんだけど、とりあえずそいつに会って目覚ませ」




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