私は男のようです。相棒編

□俺の日常と抱負
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「紅葉ちゃんナイスー」

「なんでそんなに上手いんだよ!」


「へっへーん」



見学してから一ヶ月ぐらいたった

入ってすぐのころはぎこちなく接していたけど、和成のおかげもあって皆と打ち解けた
俺も楓も精神年齢が高いからか、頼られる
俺らのが後輩なのにな



「紅葉ちゃん、今のひょいってどうやったの、ひょいって」

「ひょいってなんだよ」



和成曰くひょいってのは、今の俺のシュートのことらしい

なんで自分より高く跳んでブロックした相手をものともせずシュートが入れられるのか


答えは決まってる



「勘となんとなくとフィーリングだ!」

「全部一緒じゃねーか!!」

「ぃで!!……幸男酷い」



適当に出した答えに後ろから綺麗にツッコミをいれたのはさっき俺のシュートをブロックしようとしたチームメイト、笠松幸男だ
一応一個上の歴とした先輩だが、この人はあえて呼び捨てで呼ぶ

だってこの人――



「呼び捨てにすんなっていってんだろうが!!」

「聞こえなーい」



からかいがいがあるんだもん
それに彼には思いがけない弱点がある



「あー!バカ松なに紅葉虐めてんの!!」

「げ、楓っ」



それが楓だ

幸男は何故か楓に弱い
最初はコイツ楓に気があるのか、と思ったが違うらしい

単に女の子の扱いに慣れてない、そんな感じ
こういうタイプが好きな子を虐めてしまうんだろうなー、とぼんやり思う


でもこの二人、結構いい感じ
付き合ってます、と言われても違和感はない

あ、なんかムカついてきた



「楓、幸男に近づいたら食べられちゃう」

「え?」



あまり身長差がない楓を後ろからギュッと抱きしめる
身長差がなくても女の子と言うだけで小さく感じる

幸男を叱るのに夢中で俺が何を言ったのか聞き取れなかったらしい

大きな目がキョトンと俺を見る



「は?人なんて食べれるわけがないだろ
 ていうか次は絶対止めてやるからな!!」



これ以上楓にどやされるのが嫌なのか、捨て台詞を吐いて離れていった幸男


ああ、そうか
相手はまだ小学生

好きな子を虐めてしまうピュアな子ども

真っ赤な顔で怒鳴りながら全力で否定する年頃ではない
ちょっと期待したのに←

もうちょっと成長した幸男をからかうのが今から楽しみになってきた
絶対顔真っ赤にするから
絶対将来うぶだから



「で、紅葉ちゃん!シスコンなのはいいけど、ちゃんと真面目に答えてよ!」



おおっと、和成を忘れるところだった

それを感じ取っているのか膨れっ面
いや、悪かったって
忘れたのは幸男のせいだから←



「でもホントにコツもなんもねーよ
 考えるんじゃなくて感じるんだ、て言うだろ?」

「うーん?言う?」

「あー……まぁ、さ

 フリースローとか入るやつと入らないやつってなんとなーく分かるじゃん?
 それと似た感覚で、こうしたら入るかな、みたいな?」



そうか、この世界にはこのネタは通じないのか
内心軽く凹みながらもぼんやりとした参考にならないであろう話をする

案の定、和成は余計に頭を抱えてしまった


そんな和成に楓の冷たい一言



「自分で考えろバカ尾」

「うわ、きびし!てか楓ちゃん前より俺に冷たくない!?」

「紅葉の相棒は私なんだから」


「まだそんなこと言ってんのか」



ここに入って一ヶ月

相棒の話なんて一ヶ月前のあれ以来口には出していないと思っていたが違うらしい
和成はまたそれか、と慣れているようだった

しかも、紅葉ちゃんのバスケパートナーは俺だよ、なんて笑顔で言った
口角が上がるのを抑えられない
ここを選んでよかった



「話の続きだけど……和成もあるだろ?なんとなくでやってのけてること」

「俺が?」

「おう、俺にとっちゃ和成のパスのが凄いと思う」



キョトンとしてる和成
まさかパスミス王のレッテルを貼られた自分のパスを凄いと言われると思わなかったんだろう


そんなレッテル、俺が剥がしてやる

そんで凄腕PGのレッテルガムテープでガッチガチに貼っつけといてやるよ




 

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