L'Imperatrice

□〜A confortable smile〜
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「今日はお仕事が何も入っていないのですし、ゆっくりお体をお休みになってください」





今朝、ルカに告げられた言葉





ルカの心配には有り難みを感じるけど……









でも、私が「ゆっくりお休み」なんて無理に決まってる























「ヴォーチェ……昨日渡した研究資料はどこへやった」




ほら、ここにも私をこき使おうとしている人がいる




別に自分が一番大変、なんてことを言いたいわけではないけど、




要するには私はゆっくり休めない、という事だ




うんざりとため息を吐いて、ソファーから立つ




そして、確かあの資料は……とぶつぶつ呟きながら、




自分の机の引き出しを探る




しかし、あのジョーリィだ




まさか私に静かに資料を探させてくれる、なんて事は無いだろう




「お前は自分が預かったものも管理出来ないくらいの馬鹿なのか?」





そろそろか、と思ったと同時に彼の皮肉が私に突き刺さってくる




「い、いいえ、それくらい出来ます……」




少しカチンと来たのを抑えながらそういう私に気付いたのか、




クックッ、と喉で笑うジョーリィ








「はい、研究資料」





両手でその大量のかみを彼に押し付ける





ジョーリィはそれを数秒見つめては、




それを受け取り、ペラペラとページをめくり始めた





その彼の動作一つ一つが、私の心臓をビクつかせる





今日はどんな文句を喰らうのか……





「やはり、私がやった方が良かったな……」





思わずうっという声が口から漏れる





またジョーリィに認めてもらえなかった、という落胆と、




文句ばかり言いやがって、という呆れが混ざった声だ





彼の次の言葉を大体そうぞしながら下を俯いていると……




「お前にしてはなかなかの上出来だがな……」





それは、自分が期待していた言葉と全く正反対の言葉だった……




「え……?」





俯いていた顔を植えにあげては、目を大きく見開く





あのジョーリィが、




人の事を除け者としかしないあのジョーリィが、





褒め言葉を口から零したのだから





そのサングラスから覗く綺麗な目が、私の反応をおかしそうに笑ってる





「そ、そうかしら……」




予想外の彼の発言が、私の心をくすぐって、なんだか照れ臭くなってきた






と、その時





頭の上にポンっと何かが置かれた





「……えっ……」





見上げてみれば、そこには人に滅多に見せないあの人の笑顔……





「初めの頃と比べれば、今回は良くやった」





怪しげに笑う彼のその顔が、私の胸を満たして行く





「む、昔に比べては、ね……」





苦笑いを浮かべたが、内心とても嬉しかった





やっぱり、この人は不思議で、冷たくて、優しくなくて、





優しい……











不器用な人だけど、私を救ってくれた、





ここに私を連れて来てくれた、




救世主……
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