L'Imperatrice

□〜My precious sister〜
2ページ/2ページ












「でも、そんな事をお嬢様に仰っている貴方ももう少し練習した方が良いのでは無いですか?」




リモーネを軽く搾っては、アールグレイに注いで行くルカ




「練習って……蹴りを?」




私は蹴りよりも、戦闘では銃や剣を使う




なんせ、元剣の幹部長、そして現剣の幹部長代理だ




剣裁きはわりかし上手い方なので、蹴りなど使わなくてもいいじゃないか




そんな風に悩んでいる姿の私を見て楽しんでいるのか、



カチャッと音をたてながら、紅茶を私の前に置いて、




ふふっと笑う




「蹴りじゃなくて、アルカナ能力の方ですよ」



眉を少しばかり垂らしながら、呆れたようにそう言う




“アルカナ能力”




その言葉にぎこちなく反応する私を見て、ルカはまたクスッと笑って来た




しかし、すぐいつのも変にまともな顔にもどって、こう言ってきた




「ヴォーチェはまだ、自分の能力を安易には使いこなせていません……!!

アルカナデュエロに出るからには、きちんと能力を使いこなせていなければ勝てないのですよ?


しかも相手は男!!


力で相手に勝つことはまず無理、と言う事は、ヴォーチェ、貴方だって十分分かっている筈……!」




男、か……




ルカの意外にもまともな発言を聞いて、




繰り返す様に心の中で小さく呟く




そして、


同時に神様への不満を抱いた




男だからなんだ、





女だからなんだ、





同じ人間には変わりないだろう





なのになんで、神は私達人間に男と女の違いと言うものを作ったのか












これは差別だ




きっとフェルやマンマも全く同じ事を考えてるだろう




女だから、特別扱い




相手は男だから気を付けろ、なんて、女を見下している様にしか聞こえてこない




ルカはそれを分かって言ってるの?




“この鈍感男……”




そんな意を目に表しながら、



ルカをきっと睨んでみる




そんな私に気付くと、少しビクついてから、




「どうしたのですか、ヴォーチェ?」




その時私は確信した




こいつには何を言っても駄目だ、と





せめて頼れる人にこの事は話そうと





ガタッと椅子から立ち上がり、カップをまた一飲みしてから、




ルカに飛び切りの笑顔を向けた





「そろそろ、仕事に行かなきゃ、」




これは私からの精一杯の思いやり




私が相談役代理になると言う事を聞いただけで大反対をしてきたルカだ





これから仕事だ、




ジョーリィと会える、




ウワーイ!、なんて言ってたら、ルカが良い顔をする訳が無い




「……ヴォーチェ、あまりあの人の研究には関わらない方が……」




「行ってくるね」





不満そうにした顔をするルカの顔なんて、見たくも無い




それに、これ以上聞きたく無かったといのもある





確かにルカがジョーリィを良く思っていないのは分かる





パーチェとおんなじ




でも、私はどうしても、あの人を悪い人とは思えない





どうしてだろう、






時々あの人に催眠術でもかけられているんじゃないか、と思う事がある





でも、私は知ってる





あの人が実はどれだけ優しいのか、とか全部知ってる




なんて言ったって、これでもう21年の付き合いだ





それくらいは分かる















そっとドアに手をかけたその時、




ルカがさっきとはまた違う声のトーンで私に聞いてきた




「あれ以来、どうですか?」




後ろを振り向くと、そこには不満そう、




というよりは、心配そう、と言う方が似合っている顔をしたルカがいた







あれ以来ーーーー




「大丈夫だよ、全然心配無い!」




これは、彼への思いやりでも何でも無い




ただの私の変に張った見栄だ




「……そう、ですか……」




安心したような、そして少し疑っているような声





本当は全然大丈夫じゃないのに、




苦しいのに、




こうやって素顔になれない私




ファミリーに“ありがとう”の一声さえかけた事がない私





WSOME ONE , PLEASE SAVEME………W




誰にも届く事のない、




私の心の叫び………
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ