magi

□面倒な人
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ふわり、と甘ったるい花のような香りと、それに混じって酒の香りが鼻をかすめる。




マスルールは、肩に担ぎ上げた思いがけず預かってしまったシャルルカンという荷物を見て、小さくため息をついた。





「先輩まだ自力で歩けないんスか。」


「んぁー…もーちょい。」


「それ、さっきも聞きましたけど。」


「ははっ、まするーる怒ってんのかぁ?まするーるのくせにぃ。」




げらげら笑うシャルルカンに心なしかイラッときたが、ここで何か言ったところで彼をどうにかできる訳ではない。脳みそまで筋肉、と称されることの多いマスルールだが、この点については学習していた。










遡ること数十分前。
下町のこぢんまりした酒屋にて。



「…シン、見つけましたよ…?」



「じっ、ジャーファル!奇遇だなお前も一杯、「シン。」…はい。」



「私、今現在溜まっている仕事を片付けるまで、禁酒、と言いませんでしたっけ…?」



「えぇっと、そうだったっけ王様もう30だから物忘れが、「言いませんでしたっけ……!?」ハイスイマセン、イイマシタ…。」



「あれぇ、でも王様ぁ、じゃーふぁるさんに許
可もらったってゆってましたぁー、」



「シャルルカンその話詳しく聞かせなさい。」



「だあああッ!シャルルカンストップ!!マジで本当に勘弁して!?ね!?」



「全くあなたは部下まで巻き込んで一体何をしてるんですか!大体あなたね、仕事なんて普段から決められた物をこなしていけばあんなに溜まることは無いんですよ?いつになったら王としての、……」



うんたらかんたら。



この会話が起こった理由をかいつまんで説明すると、禁酒令を出されていたシンドバッドはシャルルカンを誘ってこっそり王宮を抜け出し酒を飲んでいたが、夜の町を巡回していたジャーファルとマスルールに見つかってしまった、という訳だ。




元々そんなに酒に強くはないシャルルカンは既にベロンベロンに酔っ払っていたため、ジャーファルがシンドバッドを説教している間に連れて帰れ、とマスルールに役目が回ってきたのである。





「なぁまするーる、」



「なんスか。」



「俺まするーる好きだわ。」



「はぁ、」



「なんだよぉ、そんだけかよぉ!おれはっ、ほんきで、ゆってんだぞ!?ばかやろー!」



「酔っぱらいの戯言なんで。」


「だれが酔っぱらいだぁこのむっつりすけべ!!おまえやっぱりおれのこと、っきらい、なんだろぉ…ばかぁ…」



「…先輩、今日本格的にめんどくさいっスね。」



「うるせぇ…しょうがねぇだろ好きなんだからよぉ…」



ひっぐ、というなんとも微妙な声が聞こえてきた。どうやら泣いてしまったらしい。笑い上戸の次は泣き上戸か面倒くさい。




「…そういうのは素面の時に言って下さい、先輩。」




「………」




「…先輩?」




返答が無かったので、マスルールがシャルルカンの方を見やると、すぅ、と寝息が聞こえた。



…寝やがった。




酒のせいで上気した褐色の頬に小さく口付けて、マスルールはまた歩き出した。





(なんて面倒で、かわいいひと。)










駄文すいません。

 

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