佐伯孝正 短編

□君の言葉を聞かせて
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[君の声を聞かせて−佐伯side]




「佐伯、いらっしゃい!」


「こんばんは、クニさん」




いつもの挨拶を交わしメンバーのいる席に着く。

今日は俺が一番最後に到着したみたいだ。




「あれ?ハニーは?」




今日はバイトの日なのに名無しさんの姿が見えない。



「あぁ、名無しさんに今買い出し頼んでんだよ。さっきみりんの瓶落としちゃってさ」



「ふーん」




早く名無しさんに会いたかった俺は少しガッカリしてしまう。



「佐伯何飲む?」


「俺、ワインお願い。赤ね!」


「ほいほーい」




すでに数杯飲んでいるメンバーは上機嫌で話をしている。




「佐伯さんはやっぱワインとか似合っちゃうからいいよなー」


「勇太くんだってビールが似合ってるよ。CMとかにいつ抜擢されても可笑しくない」



「佐伯さん!ありがとー」



勇太くんが嬉しそうにビールを傾ける。



「佐伯、今日は仕事だったの?」


「あぁ。今日は次のクールのドラマの打ち合わせでね」


「相変わらず忙しいなぁ」




そんな世間話をしながら大和がグイッとコップを空にするとテーブルの上の酒瓶を物色する。



「お、これまだ開いてないじゃん…ってコレは!」



大和の言葉に自然と視線が集まる。




大和の手にあったのは、このメンバーには御馴染みの禁断の酒だった。





「それって…確か蓮の…」



俺の言葉に蓮が小さく頷く。




「…ダニエルがいっぱいお土産で持ってきた。…俺そんなに飲めないから…」





そう。

大和の手にあったのは蓮の祖国の地酒。





しかもただの地酒じゃない。

現地では〈正直になるお酒〉と言う別名を持つ代物だ。




大和が途端に苦い顔をする。



そうこのお酒の犠牲者になったのは大和だ。



花見の席でしらずこの酒を飲み、赤っ恥をかいた。




「また大和が飲んだらぁ~?」



からかう様に言うと大和が激しく首を振る。




「絶対ヤダ!お前が飲め!」



「俺はいつでも正直に生きてるからねぇ~♪」



「まぁ確かに佐伯はあんまり変化ないかもな、ほい、ワイン」





クニさんからワインを受け取ると大和が悔しそうな顔をする。




「…名無しさんに飲ませたら?…」


「「「「え?」」」」



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