シャーマンキング 小説
□あの世とこの世のつながり
1ページ/4ページ
喪助を待っていた600年間、阿弥陀丸は人と触れ合うことを特に望んではいなかった。
否、忘れていたのだ。人と触れ合うという事の温かさを…
霊体では人に触れる事はかなわない。
日差しの強い昼間の体育の授業で葉のクラスの男子はサッカーをしていた。
この暑さではだらけている生徒が多いが、葉は
「暑さと戦ってるんよ」
といって無邪気に走り回っていた。
「葉殿、大丈夫でござるか?汗の量が…」
「平気平気!オイラは暑さには負けんよ」
うぇっへっへっと葉特有の笑い方。
葉の返答を聞いて安心したのも束の間
へなへなっと倒れてしまったのだ。
「葉殿!」
しっかりと葉を受け止めた…つもりだった。
だが、霊体の阿弥陀丸では葉を受け止めること
はできず葉は頭から倒れてしまった。
…拙者は倒れた主人を支えることもできぬのか。
そう思うと阿弥陀丸はひどく悲しくなった。
「葉君!?」
葉が倒れたの気付いたまん太が驚いてかけよってくる。
「どうしたの?熱中症?…ってうわ!額から血がでてるよ!」
「あぁ、どうりで頭が痛いわけだ。わりぃまん太、先生に保健室に行くって伝えてくれるか?」
「分かった。水分補給と消毒はちゃんとするんだよ?」
葉が怪我していることにまん太は少し動揺したものの、いつもと変わらないユルイ姿を見て安心した。
「阿弥陀丸は保健室まで肩かしてくれ」
「…しかし、拙者では葉殿に触れることすら…」
ドサッ
「さっきはコントロールできんかったけど、オイラはシャーマンなんだから阿弥陀丸に触れることぐらいできるんよ」
「葉殿…」
阿弥陀丸の肩によりかかる葉の感触。
阿弥陀丸にとって、それがたまらなく嬉しかったのだ。
そして600年ぶりに人と触れ合うことの温かさを知った。
「オイラはいつでも阿弥陀丸が触れられるようにしておくから、もうあんな悲しい顔すんなよ」