サディスティック・スノウ
□三話 バイバイ日常
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病院から出ると、初夏には似合わない凩のような風が吹き、身をちぢこませるように寒さに耐えた。
冷夏冷夏って言ってるけど、これは流石に寒すぎる。
空はどんよりと灰色の分厚い雲が浮かんでいて、今にも雨が降りそう。
ここしばらくまともに太陽を見ていないなぁ。
そう呟いて、病院前のタクシー乗り場まで歩いた。
止まっていた一台のタクシーに乗り、天人の運転手さんに行き先を伝えようと身を少し乗り出した。
『あの、吉原の入り口までお願いします。』
「あいよ。」
運転手さんは車を発進させた。
「病院から出てきたってことはめでたく退院かい?」
運転手さんは唐突に話し掛けてきた。
『あ、はい。ちょっと事故…?で。』
隕石ぶち当たったとか言えない。
「そうかいそうかい。そりゃめでたい。」
運転手さんは笑いながら車を走らせる。
あんまり深く聞かれなくて良かった。
説明が大変だもの。
でも、隕石が直撃してピンピンしてるって…
本当に奇跡だよね…。
私は改めて安堵した。