サディスティック・スノウ
□二話 名前を
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黒髪の方が最初に振り返った。
「真選組副長の土方だ。
病み上がりで悪いが、三日前の事故について話を聞きたい。」
瞳孔が開いている瞳が印象的な怖そうな人。
少女はそう思った。
次に振り返った茶髪の男を見て、少女は驚いた。
どう見ても、同い年かそれ以下にしか見えなかった。
こんなに若い人が警察官。
少女がちょっと言葉に詰まる。
そして、茶髪男はバインダーとボールペンを取り出して喋り出す。
「俺は沖田でさァ。
一応調書取るんで、名前教えろィ。」
語尾の伸ばし方が気になるしゃべり方が印象に残った。
少女は聞かれた通りに答えた。
『神崎さくら…です。』
名前。
それは、モブには絶対に無いもの。
少女はそれが設定されている。
このモブ少女…さくらは、
本来ならばこの『銀魂』の世界では背景も同然、顔すらまともに描かれる事はない。
しかし、この話では…
不運な事故によって名前、生い立ち、年齢、性格等が設定されてしまった。
全ては、不運の末。
神の悪戯。
その先にあるのが果たしてハッピーエンドなのか、
誰も救われないバッドエンドなのか。
全ては、モブ少女『さくら』の心臓に留まった石が
雪晶石が知っている。